映画ネタバレと感想

映画【人間失格】ネタバレあらすじ!太宰治(小栗旬)を巡る愛憎劇!感想レビューも

(C)2019「人間失格」製作委員会

“奇才”蜷川実花が満を持して送り出す、百花繚乱の恋愛映画です。

彼女が満を持して作品に招聘したのが小栗旬___チャーミングでアンニュイな一人の作家を取り巻く女性らの愛憎と、彼の孤独をこれまでにないスタイルで描いています。

ここでは、映画「人間失格 太宰治と3人の女たち」のあらすじを「ネタバレなし」、「ネタバレあり(結末まで)」のパートに分けてご紹介します。

後半では、感想レビューを書いていますので、そちらもぜひご覧ください。

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【人間失格 太宰治と3人の女たち】予備知識

「人間失格 太宰治と3人の女たち」の予告動画

公開日(日本):2019年9月13日㈮

監督:蜷川実花

キャスト
小栗旬(太宰治):
文豪と呼ばれる作家。
太平洋戦争の戦前~戦後にかけて活躍したが、薬物中毒に悩まされ、自殺未遂を繰り返すという破天荒な人生を、心中で締めくくることになる。
女性関係が派手だったが、結婚後も妻のほかに愛人を持ち、子供も生まれていた。
その死は多くのファンに惜しまれ、その遺体が発見された彼の誕生日(6月19日)はその最期の短編「桜桃」にちなんで今でも桜桃忌(おうとうき)として知られ、その墓所を多くの人々が訪れ参拝する。

宮沢りえ(津島美知子):
太宰の正妻。
女学校の教師などを経て、縁あって太宰と結婚するも、彼の愛人らの存在に悩むことになる。
3人の子供(園子、正樹、里子)を生むが、彼の心中によって取り残されてしまう。
太宰の作品に心酔しており、「あなたはもっと凄いものが書ける」と信じ、夫を叱咤激励をしていた。

沢尻エリカ(太田静子):
文学少女だったが、太宰治の愛人となり、彼の娘(太田治子)を生んでいる。

二階堂ふみ(山崎富栄):
美容師として働いていたが、戦争で全てを失った未亡人。
正妻・美知子の存在、静子の出産に悩みながらも、病んでいく太宰に寄り添い、最期の瞬間を共にする。

成田凌(佐倉潤一):太宰に心酔していた若手編集者。
千葉雄大(太田薫):静子の弟。静子に太宰の作品を勧めたことから運命が回り始めた。
瀬戸康史(伊馬春部):太宰治の親友で早くから様々なメディアの中で活躍していた人物。
高良健吾(三島由紀夫):当時20代前半、太宰の生き様や作品を批判する天才作家。
藤原竜也(坂口安吾):太宰とは“同志”ともいえる無頼派の作家。

稲垣来泉(園子):太宰と美知子の長女
山谷花純
片山友希
宮下かな子
山本浩司
壇蜜:カフェーのママ
木下隆行(TKO):闇市の店主
近藤芳正:出版社の編集者

(C)2019「人間失格」製作委員会

作品概要

日本を代表する作家・太宰治。

その作品とともによく知られていたのが美しい妻と、そして愛人たちとのただれた人生です。

欲望に素直に生き、しかしそれに溺れるように沈んでいく切ない物語が、蜷川実花の鮮烈で美麗な色彩感覚で再現されました。

【人間失格 太宰治と3人の女たち】あらすじ(ネタバレなし)

恥の多い生涯を送ってきました

冒頭、ざぶざぶと呑み込まれそうな波の音と黒い水の中で、男と女が浮き沈みを繰り返しています。

二人の腕は赤い扱帯でしっかりと結び付けられていました。

必死で愛の言葉を伝え合おうとする二人でしたが。

いまわの際に女が叫んだ名前に、男はふと我に返ってしまったのです。

「ケンジさん!」

…それは彼の名前ではありませんでした。

ずぶ濡れのまま、一人で浜に上がってきた男は、ぼそっと言ったのです。

「死ぬかと思った…」

彼は太宰治。

当時流行作家として知られるようになった彼は、しかし妻と子がありながらも酒と薬物、そして女に溺れる日々を過ごしていたのです。

桃色の女

(C)2019「人間失格」製作委員会

創作に行き詰まっていた太宰はとある女と知り合います。

太田静子___彼女は戦後のまだくすんだ色ばかりの世の中にあって、まるで花が咲いたような桃色の存在でした。

着る服も、そして身の回りの調度品も、全てが鮮やかな色ばかり。

かつて幼くして失った子供の面影を探してか、聖母子像を部屋に飾っていた彼女でしたが。

豊かな黒髪は美しく波打ち、引いた紅は赤く、蠱惑的ですらありました。

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静子は太宰に興味を持つとともに、自らも小説を書いて世の中に出るという野心を持っていたのです。

「人間は、恋と革命のために生まれてきたのだ」

見た目のたおやかさに反するその力強い言葉に魅了されてしまう太宰。

彼女を伴って劇場でオペラを見ていると、その非日常の空間で、互いの心はたちまち燃え上がってしまったのです。

人気のないロビーに出てきた二人。

赤いじゅうたんのらせん階段で、太宰は静子に囁きました。

「一緒に堕ちよう…静子。死ぬ気で、恋___する?」

太宰は彼女が持ちかけた題材をもとに作品を書き始めると、たちまち評判になり、連載は大成功。

静子の日記をもとに書かれた「斜陽」。

没落華族の生活は庶民に大いに受け、浮き沈みの激しい文壇の中でも、太宰は一躍寵児として返り咲いたのです。

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そんな彼を支えていたのが若手編集者の佐倉でした。

彼は学生の頃から太宰の作品に惚れ込んで担当編集者になったという筋金入りのファンであり、彼に心酔していたのです。

それ故に、苦言を呈することも、また逆に使い走りにも甘んじで何くれとなく太宰のために働いていたのですが

静子が正妻の美知子に対抗するかのように…太宰に「赤ちゃんが欲しい」とねだったことを知り、危機感を募らせました。

なぜなら、太宰はこうした女の“お願い”を断ることができない質だったからです。



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糟糠の妻

(C)2019「人間失格」製作委員会

太宰の妻・美知子はかつて女学校の教師を務めるなど、当時としては知的な賢婦人として知られていました。

長女・園子、長男・正樹にも恵まれて一見穏やかに暮らしているようにも見えましたが。

その家庭を切り盛りする彼女の心の中は修羅の世界でした。

太宰は子供たちを可愛がってはいましたが。

その仕事ぶりには波があり、経済的にも順調な時ばかりではありません。

作品のファンであったことが太宰と知り合うきっかけになった美知子でしたから、彼の能力を誰よりも信じ、誰よりも愛していたのは確かでしょうが。

甘やかしたらそこで終わってしまう、と信じていたのか。

「お父さんは天才!」と呟きながらも、美知子は一度も太宰本人にむかって彼の作品を褒めることをしなかったのです。

まるで母親の前で拗ねる少年のような太宰に呆れながらも、世話を焼く女房として奮闘する彼女の前に、やがて静子や、後にもう一人の愛人・富栄が現れるのですが。

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美知子は取り乱すこともせずに静かに気持ちを噛み殺すようにしてやり過ごします。

しかし、3人目の子供をお腹に宿している時に、太宰は静子にせがまれて関係を持ち、やがて妊娠。

そんな美知子の内心を知ってか、知らずか。

太宰は「ヴィヨンの妻」という短編小説を出版し、そうした妻の在り方をまるで美徳のように書き連ねて「作家の妻とはかくあるべし」というまるで偶像のような姿に祭り上げられてしまうのです。

無頼派の友

坂口安吾は何事においても口が悪く、そして太宰の作品や生きざまについても歯に衣着せない物言いで批判を繰り返しました。

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二人が行きつけのバー・ルパンで語っている姿には、共感以上に相容れない心情をぶつけ合うものがありました。

「やだねぇええええ!女房だの子供だの、壊れちゃ困るモンなんて、作家は持っちゃいけねえんだよ!」

クダを巻く坂口の目を直視せずに、太宰は答えました。

「アレはアレで、いじらしいもんですよ」

「人間は、堕ちる___生きてるから、堕ちる…なぁああああ、太宰!もーーーーーっと堕ちろよ!」

ただ一人でもがきながら「堕落論」を世に出した彼と、妻や愛人らの“ネタ”を書くことで文壇の地位を堅持していた太宰は対立しながらも離れることは無く。

複雑に絡み合う不思議な絆がそこにあったのです。

静子と富栄

静子には、彼女を慕い、そのために太宰に憤っている弟の薫がいました。

太宰の行状を知って忠告を重ねるものの、静子は聞く耳を持たないどころか、正妻の美知子を意識し、対抗しようと挑む…。

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薫はそんな姉の姿を胸を傷めながら見守っていました。

「愛されない妻よりも、ずっと恋される愛人でいたい」

そんな姉の希望を叶えてやろうと、身重の身を案じながらも太宰が飲んでいる店に連れて行くのですが。

そこで、思わぬ事態が起こりました。

「ヴィヨンの妻」の評判で、出版社の関係者や文壇の作家らが大騒ぎしていたのです。

正妻の存在。

そして作家の妻として美知子が賛美される言葉を聞きながら、店の隅に座っていた静子は、隣にいた富栄と二人でうどんをすすることに。

しかし、富栄もまた太宰に魅せられていた一人でした。

彼女は夫を戦争で失った未亡人だったのです。

そして、その頃にはまだ、夫に心を残していたのですが。

「大丈夫…君は、僕が好きだよ」

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太宰からの強引なアプローチで押さえていたタガが弾けるように恋心を爆発させてしまった富栄は、次第に理性を欠いて彼に傾倒していったのでした。

以下、結末までのネタバレになります。ご注意ください。


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【人間失格 太宰治と3人の女たち】あらすじ(ネタバレ)

破綻の始まり

太宰は富栄に溺れるようになり、次第に自宅に戻らなくなっていきました。

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仕事をする気持ちはあっても、相変わらず自堕落に酒とたばこに溺れ、それ以上に富栄の身体に執着していくのです。

編集者の佐倉はそんな彼を案じて奔走しますが、そうこうするうちに静子に娘が生まれ、弟の薫がその知らせを持ってきました。

まるで自室に飾っていた聖母子像のような静子の写真を携えてやってきた彼に、自分の名前の字をとって「治子」と命名し、その娘を自分の子と認める書付を託すのですが。

喀血を押し留められなくなり、そして障害を持つ長男とまだ赤ん坊の次女の世話にかかりきりになっている美知子にあてつけるかのように薬の大量摂取で自殺未遂を図るなど、太宰の行いは常軌を逸していきました。

それぞれの「斜陽」

祭りの夜。

縁日で込み合う人の群れの中で強引に富栄を抱こうとしているところを娘の園子に目撃されてしまう太宰。

取り乱すこともなく「お父さんは、お仕事だから」とその手を引いて去っていく美知子。

皆がいろいろなバランスを欠いて、転げるように坂を堕ちていく…そんな日々の中で。

佐倉が太宰に言いました。

「たかが不倫小説じゃないですかっ!」

太宰は、小説を書くためなら何でもする、と酷評すらされていたのです。

当時「斜陽」は単行本として出版され、大ベストセラーとなっていました。

子供ですら“斜陽”という言葉を知っているという大ブームにもてはやされながらも、太宰の目は次第に曇り、濁っていったのです。

「たかが不倫…じゃあお前やってみろよ!」

それとは対照的に、静子は斜陽が世間に認められていったことに瞳を輝かせていました。

“私たちの小説”___彼女にとって、「斜陽」は共著であり、自分の作品でもあったのです。

太宰は静子を黙らせるために当時としては大金の一万円を支払っていたのでした。

しかし、貪欲な静子はそれに飽き足らず、名前を載せて欲しい、などと言って太宰を困らせるようになったのです。

生きるか、死ぬか

そんなある日。

太宰はバーで若い男に出会いました。

髪をきっちりと七三に分け、仕立ての良い着物を着た彼の名は、三島由紀夫。

当時、新進気鋭の作家であり、大蔵省の役人でもあった彼は面と向かって彼に言い放つのです。

「僕は太宰さんの文学が嫌いです」

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彼は太宰が“文学”をただの見世物に墜とした、と若い憤りを持っていたのでした。

死ぬ、死ぬ、と言いながらも、そんな風にいう人間は簡単には死なないのだ、と。

張りのある声と、逸らさない力強い視線に、しかしたじろぎながらも太宰は立ち向かっていくのです。

自分は命がけで小説を書いている…三島も自分の作品が好きだから無視できないのだと。

獣のように喰ってかかるその狂気じみた姿に呆れたように三島は去っていきますが。

彼が自身の文学を極め、その二十数年後に似て非なる非業の最後を遂げることになるとは、まだお互いに気付いていませんでした。



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死ぬほどの恋

富栄の、太宰に対する執着は増していき、太宰の生命力は吸い取られるように削れていきました。

そんな中で、自宅には税金の督促状が送られてきます。

途方もない金額を納付せよとされていることに驚き、美知子は佐倉を通じて太宰に連絡を取りますが、彼にもその当てがあったわけではないのです。

自堕落に過ごすうちに“家族”のことは二の次になり、美知子も心をすり減らしていました。

その頃、妹が亡くなった美知子がしばらく家を空けていたのですが。

自宅に戻るといつも玩具で散らかっていたはずの部屋がすっきりと片付けられていました。

不思議に思っていると娘の園子が母の帰宅を喜びながら、報告したのです。

「お仕事したのよ。お姉さんとお片付けしたの!」

…自分の不在の間に愛人が家に入り込んでいた、と知り。

美知子の心は壊れそうになりました。

かろうじて踏みとどまったのは、幼い子供たちがいたからです。

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しかし、その頃、残り僅かな太宰の生命は、富栄の死への願望に吸い上げられていったのでした。

「死にたいんです、一緒に」

捨てられ、取り残されることを恐れるあまり、富栄は「死」を口にするようになっていきました。

これまでに何度も心中未遂や自殺未遂を起こしてきた太宰でしたが。

富栄に引きずられるように、次第に足を踏み外していきました。

結核で血を吐き、死の淵をさまよっていた彼を世話して救ったのも富栄でしたが。

静子のように、現世で生きる望みとなる太宰の子供を宿すことができなかった富栄は、永遠に自分のものにするために、太宰との心中を願うようになっていったのです。

佐倉が恐れたことは現実になりました。

二人は、ある初夏の頃、玉川上水に身を投げて命を絶ったのです。

その直前まで。

太宰は富栄を思いとどめようと腐心していましたが。

富江はその腕に赤い扱帯を巻き付けてこの世のものとは思えない微笑みを浮かべていました。

自分の腕と太宰の腕が離れないように、結び方を調べたのだという彼女はまるで少女のように満ち足りた微笑みを浮かべていました。

青い花が咲き乱れる先に身を躍らせた二人が見つかったのは、それから三日後のことでした。

その後の女たち、そして太宰は…

美知子の手元に残されていたのは、太宰からの遺書。

その最後の1枚を読んで…彼女は立ち上がり、そして雨戸をあけるのです。

記者たちがざわめく中で、美知子は物干しざおを雑巾で拭き、洗い上がった洗濯物を干し始めました。

記者たちは意表を突かれて、去っていきます。

最後の一文___「誰よりもお前を愛してゐました」。

苦労の末に勝ち得た、たった一つのそれが美知子の勲章だったのです。

「斜陽」が世に出た時に、自分の名前も載せて欲しいとせがんで叶わなかった静子。

しかし、太宰の死後に手元には愛する娘・治子が残りました。

そして彼女は太宰との日々と彼への愛を綴った「斜陽日記」という本を上梓したのです。

自分の名前で出した本と娘の存在。

それが彼女の自信となり、微笑む頬はバラ色に染まっていたのでした。

___暗い水の中に沈んでいく太宰の姿。

しかし、ぱ!と彼は目を見開いたのです。

もしかしたら。
彼はここで死ぬつもりはなかったのかもしれません。

富栄に押し切られるようにして水に沈んだ太宰は、しかし、ただついうっかり死んでしまっただけで…本当にこうなるとは思っていなかったのかも…。

どこまでも優しく。
そして揺れ動くままの人生。

太宰治という人は本当に望んだ人生が何だったのかもわからないままに泡となって消えてしまったのです。



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【人間失格 太宰治と3人の女たち】感想とレビュー

鮮烈で美麗な、まさに全編通して蜷川実花の世界という作品でした。


終戦直後ということを思えば、こんなに豊かな世界ではなかったはずですが。

もうそんなことはどうでも良くて。

あの色鮮やかな色彩、そして派手ではありながらも気品ある調度や衣装、女優さんたちのメイクなど、それはもう全てが各々の心象風景だったのだ、と思えるのです。

「人間失格」と、太宰の作品のタイトルを使っていましたが。

その実、この作品は太宰の最後の日々をつぶさに描き出している全くの別物であり…それを彼女が描くとこうなるのだというそのギャップが素晴らしかったです。

これは、“人間”であることを“失格”してしまった一人の男の物語。

彼が没した時、まだたった38歳であったことに驚き、その最晩年を36歳の小栗旬さんが演じたということがとても感慨深いです。

彼を取り巻く三人の女性がとても美しく。

小栗・太宰は妻には何をしても叱られないような母性を求め、そこに居場所を残しながらも愛人たちには恋を囁く…なんというはた迷惑な男だろう!と苛立ちすら感じますが。

しかし、それが「ああ…まぁ、うん、彼なら、仕方ないかもしれないね」とあきらめのような気持ちになってしまう…。

そんな不思議な魅力が、確かにあったのです。


冒頭の海での心中未遂から、ラストシーンの“成功”まで。

彼は揺れながら引っ張られながら、しぶしぶ生きているように見えますが。

本当にやりたかったのは、いったい何だったのかな、と。

不思議な感慨がわいてきます。


さて、周囲を固めるキャストさんたちも、個性豊かですばらしかったですね。

全員がそれぞれのベクトルに向かって振り切っている感があって、誰もが懸命に生きていました。

宮沢りえさんの安定感は言わずもがなですが。

現代の魔性の女2人が同じフレームに映っていた時には無駄に心臓がバクバクするような、静子と富栄。

沢尻エリカさんは7年前の衝撃作「ヘルタースケルター」で蜷川実花監督とタッグを組み、今回はさらに凄みを増した美貌を惜しみなくさらけ出してくれました。

そして二階堂ふみさんはますますタブーのない芝居の取り組み、その姿勢に驚かされます。

前作の「翔んで埼玉」で見せてくれた美少年、そして春先のドラマ「ストロベリーナイト・サーガ」とは全く違う、恋で心を食い潰されていく女性を見事に演じていました。

特筆すべきは、短い登場でしたが、坂口安吾と三島由紀夫の文豪二人。

クダを巻く藤原竜也の舞台ばりの濃厚でこってりした芝居。

そして高良健吾の、高潔できっぱりとした主張は、後年彼が最期に携えていた日本刀“関ノ孫六”のような切れ味ではなかったか、と。

実際、華族の血筋ではなくとも、幕末の幕臣・永井玄蕃頭の高孫であり、上流の家に生まれ育った三島由紀夫は“斜陽”を始めとする太宰の作品に対して懐疑的・批判的であり、そうした相容れない部分を短い対面の中によく詰め込んだな、と感じました。

最後に、MVPをさしあげたいキャストさん。

太宰の長女・園子ちゃんを演じた稲垣来泉ちゃん。


現在8歳の彼女はドラマ「TWO WEEKS」で三浦春馬さんの娘・ハナちゃんを演じ、周囲のキャストさんたちをメロメロにしています。

かつて、朝ドラ「とと姉ちゃん」では主人公の姪を、「この世界の片隅に」では尾野真千子さん演じる義姉の娘・晴美ちゃんを演じていました。

ピュアで無垢なその笑顔は、大人たちのドロドロの愛憎劇の中をくるくると軽快に駆け抜ける、一服の清涼剤のようでした。

苦労する母・美知子を気遣い、弟・正樹の遊び相手を務めていた園子ちゃん。

リアルな彼女は、この時期に父親を失って、苦労されたことと思いますが。

この物語の中では小さな“救い”だったのです。

これからご覧になるかたには、ぜひ注目していただきたいですね。



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まとめ

色!!!!!

とにかくその“色彩”に注目していただきたい、そんな作品です。

過去作の「さくらん」や「ヘルタースケルター」も然り。

とにかく鮮やかな色遣いが素晴らしい作品です。

監督としても素晴らしい蜷川実花さんは、しかしやはり写真家としての才能がずば抜けており、その感覚も常人の物ではないのだということがはっきりわかります。

ワンシーンごとに、これがフィルムであったなら、その全てを写真集に収めたい、と思うほどの隙のなさ。

静子のドレスやコート、住まう部屋のベッドカバーや壁、そして花々の色!色!色!

一つひとつの主張が強すぎるものでありながら、はみ出すほどのエネルギーを包み込むような調和が素晴らしい。

そして逆に、三島の自宅の、当時の日本としてはありふれた情景の家屋と美知子の着物の柄のシックさ。

そのどれとも交わらない、富栄の部屋の、現在の若い女性も好みそうなシックな装いやびろうどのソファ、敷物。

そのチョイスのどれもが秀逸で、まるで映画を観ている間異次元に跳んでいたかのような感慨に浸ってしまいました。


構想7年…退廃的な匂いと、死を描くことでより一層“生命力”が迸るような素敵な映画でした。

ドロドロ(笑)ですけど、あの美しい色彩に溺れるために、もう一回行ってもいいなぁ、と思っています。

さて、その中でも特筆すべきは“赤”に象徴された場所。

一つは冒頭から少しして、太宰が子供たちを連れて歩いていた曼殊沙華の美しい花畑。

ちょうどこれから見ごろを迎えます。

埼玉県の日高にある巾着田。


一年でもっとも美しい時期を迎えます。
ぜひご覧くださいね。

そして太宰と静子がオペラを見ていた日比谷の日生劇場。

作られたのはもっと後なのですが。

赤じゅうたんと、ロビーのらせん階段がとても素敵です。

二階席に座った彼らの頭上にある天井が、リトルマーメイドの海底のシーンを思い起こさせるような不思議なデザインです。

一見の価値あり、と思いますので、チェックしてみてください。

リアルタイムで観られて幸せだったなぁ。

この色彩は、大きなスクリーンでご覧になることをおすすめしたいです。

アンハッピーエンドのはずなのに、どこか清々しくほっとして見終われる、そんな作品でした。

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