映画ネタバレと感想

映画【楽園】ネタバレあらすじ!この国にあったはずの楽園はどこ…?感想レビューも

(C)2019「楽園」製作委員会

その日、一人の女の子が消えました。

学校帰りの田舎道で、忽然と姿を消してしまった愛華。

田んぼの真ん中のあぜ道を抜けて、森に差し掛かるY字路で一体何があったのか。

人々の心が荒み、壊れるとき、___孤独な青年、少女の最期の目撃者となった同級生、そして限界集落の中で追い込まれていく男の人生がそこで交錯していたのです。

ここでは、映画「楽園」のあらすじを「ネタバレなし」、「ネタバレあり(結末まで)」のパートに分けてご紹介します。

後半では、感想レビューを書いていますので、そちらもぜひご覧ください。

この記事のURLをコピーする
映画【クロール -凶暴領域-】ネタバレあらすじ!ハリケーンとワニの恐怖!感想とレビューも 「ハイテンション」「ピラニア3D」などパニックスリーラーの名手として名を馳せるアレクサンドル・アジャが挑むテーマは「ワニ」。 ...

映画【クロール -凶暴領域-】ネタバレあらすじ!ハリケーンとワニの恐怖!感想とレビューも



スポンサーリンク


【楽園】予備知識

「楽園」の予告動画

公開日(日本):2019年10月18日

監督: 瀬々敬久

キャスト

綾野剛(中村豪士):
7歳で難民として日本にやってきた青年。

日本語が不自由で、友達もおらず、孤独に暮らしていた。

定職に付けないままに母親の洋子が営む移動リサイクルショップの手伝いをしている。

二度目の幼女誘拐事件の容疑者として村中の人間から追い込まれていく。

杉咲花(湯川紡=つむぎ):
12年前の誘拐事件で被害者となった藤木愛華の同級生。

事件の起こる寸前まで二人で下校していたが、Y字路で別れ、その姿の最期の目撃者となった。

高校を卒業してホームセンターでアルバイトをしている。

愛華を残して「自分だけが幸せになって良いのか」と自問を続けており、笑顔は滅多にみられない。

その後一人で東京に出て、青果市場で働くようになる。

村上虹郎(野上広呂):
愛華、紡と同級生で、今では紡に好意を寄せているが、相手にされない。

後に紡を追って東京に出る。

片岡礼子(久子):
村のまとめ役を務める伊作の娘で、夫を事故で失い、息子と2人で故郷に戻ってきた。

農産物の直売所で働いているが、村おこしの事業で善次郎の立場がおかしくなっていくことを心配していた。

黒沢あすか(中村洋子):
豪士の母親。

幼かった豪士を連れて日本に渡ってきた。

恐らくはカンボジアの出身で、難民申請して日本に帰化したものと思われる。

石橋静河(田中紀子):

善次郎の妻。

千葉でパン屋を営む家の娘だった。

善次郎結婚し、彼の親の介護のために村にUターンしてきたが、ほどなくして白血病で亡くなった。

根岸季衣(藤木朝子):
五郎の妻で、12年前の誘拐事件の被害者・愛華の祖母。

孫の事件を境に心が壊れ、認知症になり、12年後に没する。

柄本明(藤木五郎):
村の相談役のような老人で、愛華の祖父。

成長した紡を見て、酷い言葉を浴びせてしまう。

佐藤浩市(田中善次郎):
親の介護のために村にUターンして帰ってきたが、周囲の老人たちに良いように使われて“万屋(よろずや)”と呼ばれていた。

普段は残された耕作地で養蜂業を営んでおり、そのハチミツを使って村おこしを考えていた。

しかし、あらぬ誤解を受けて村八分になり、孤独の中で心を病んでしまう。

作品概要

綾野剛さんを主演に据え、「怒り」の吉田修一さんの「犯罪小説集」を、「64-ロクヨン-」の瀬々敬久監督が実写化という、なんとも豪華な一本です。

短編の「青田Y字路」と「万屋善次郎」を一本の作品にまとめ、二つの事件を通して描かれるサスペンスです。

誰の心にもあるかもしれない闇が、じわりと足元から這い上ってくるような怖さは、タイトルの“楽園”とは対極のものともいえますが。

思い通りに生きられない苦しみの中で自分の“楽園”を掴もうともがく___そんな人々の姿を描いた物語です。



スポンサーリンク


【楽園】あらすじ(ネタバレなし)

青田Y字路

田んぼの中に走るあぜ道を、二人の女の子が歩いていました。

一人は愛華。
そしてもう一人は紡です。

赤いランドセルに黄色い帽子。

2人は畦道に生えているシロツメクサを編んで花冠を作って遊んでいましたが。

その道の先にあるY字路で、いつものように別れました。

紡は右へ。
愛華は左へ。

しかし、その時を境に、愛華はぷっつりと姿を消してしまったのです。

それがこの村に起こる悲劇の、一つの幕開けでした。

孤独な青年

同じ日、村の古い神社では骨董市が開かれていました。

その片隅で一人のチンピラが女をボコボコに殴っていたのです。

彼女は、みかじめ料を収めずに、その境内の隅に“移動リサイクルショップ”の店を出そうとして見せしめのように傷めつけられていたのでした。

傍らで震えていたその女の息子は、境内にいた村の世話役たちに助けを求め、藤木五郎の仲裁で地獄のような時間から解放されたのでした。

女は中村洋子といい、かつて難民として日本にやってきて、偽物のブランド品を売ることで生計を立てていたのです。

そして、青年はその息子の豪士。

(C)2019「楽園」製作委員会

日本語が不自由なことから口数が少なく、定職に就くこともできないままに母親の手伝いをして日銭を得る暮らしでした。

藤木はそんな母子に同情して、仕事を紹介してやる、と約束したのですが。

その日の夕方、愛華の行方不明事件が起こります。

五郎は、愛華の祖父だったのです。

愛華は見つからず、村は変わっていきました。

現場になったY字路には愛華に関する情報を求める看板が作られましたが。

それはいつの間にか村の日常の中に紛れるようになり、時間は流れ…あの日、Y字路で別れて一人残された紡は、傷ついた心を抱えたまま成長していたのです。

お神楽(おかぐら)の笛

(C)2019「楽園」製作委員会

事件から12年が経ち、紡は高校を卒業後、地元のホームセンターでアルバイトをしていました。

村に残った同級生は彼女と、広呂の二人です。

お祭りのお神楽の練習が始まると、子供も大人も夜な夜な体育館に集められて指導する側とされる側に分かれて当日まで稽古をしていました。

村に暮らす若者が減る中で、お神楽の笛を吹ける紡は重宝されて祭礼のたびにお呼びがかかるのです。

そんな中で、広呂は紡に対して積極的に関わろうとしていました。

しかし、心を閉ざしがちな紡は彼のことを相手にしません。

稽古が終わり、紡は自転車に乗ろうとした時に、タイヤがパンクしていたことに気付いたのですが、車で送るという広呂を置いて、一人、畦道を自転車を引いて紡は家路を急ぎました。

その時、一本道を背後から迫る車のライト。

恐怖を覚え、慌てた紡の自転車が転び、車から男が降りてきました。

豪士です。

祭の準備の手伝いに来ていた彼が、紡の様子を見て追ってきたのです。

転んだ拍子にお神楽の笛が壊れてしまったことに気付いた紡に、豪士は弁償を申し出たのです。

固辞する紡でしたが。

松本まで車を出してくれるという、その気持ちには甘えることにしたのです。

松本へ…

翌朝の七時。

Y字路で待ち合わせをした二人を、見つめる人影がありました。

五郎です。

彼は、事件以来ずっとこの場所に掲げられている愛華の写真入りの看板をきれいに拭いていたのです。

事件の日。
夕方の6時に仕事を紹介してやると言う約束で藤木家を訪れた豪士でしたが。

騒動に巻き込まれ、愛華の捜索に駆り出されて、その後村は混乱を極め、結局仕事は紹介してもらうこともできないままになってしまったのです。

紡は、現場で五郎に詰問され、泣いていました。

その頃のことを思い出すと、二人は言葉が少なくなります。

和楽器の店で笛を選んだ紡に、豪士が支払いを申し出ました。

彼に甘え、小雨の降る中二人で村に戻るとき、車の中で紡は小銭入れを見せたのです。

神社のお祭りで、豪士と母が出していたリサイクルショップでは、偽ブランド品を売っていました。

その一つを彼女が買って、愛用していたのです。

道中、他愛もない話をして。

村に戻ってくると、その日の夜は、縁日です。

お神楽で笛を吹く紡は、豪士を祭に誘いました。

彼もまた、神社の縁日で店を出すのです。

穏やかなありふれた夜になるはず、と思っていた二人でしたが。

(C)2019「楽園」製作委員会

それが最後の会話になってしまったのです。

Y字路、再び…!

縁日が始まるころ。

あのY字路でまた人が集まり始めました。

…小学校帰りの、ランドセルを背負った女の子が一人、行方不明になった、というのです。

あの時と同じように___。

集まり始めた大人たちは、疑心暗鬼に襲われていました。

愛華の事件のときに山狩りを経験した男が「あの時…」と話し始めました。

(C)2019「楽園」製作委員会

「あの事件の時、あの男と一緒に沢に降りた。
よろめいて腕をひかれたが、その反対側から愛華ちゃんのランドセルがみつかったんだ。
あの時、奴は自分をそちらに行かせまいとして腕を引っ張ったに違いない!」

あいつ=豪士が愛華ちゃんを殺した!
だから、今回の犯人も豪士に違いない!

その場にいたすべての人間は、豪士が暮らしていたバラックのような町営住宅に殺到しました。

先頭を切っていたのは五郎です。

我を忘れた彼はドアを蹴破り家の中に押し入りました。

しかし、そこに豪士の姿はありません。

なだれ込んだ男らは部屋を滅茶滅茶にひっくり返しましたが、手掛かりもありません。

その時、豪士が戻ってきましたが。

異様な光景に息を飲み、フリーズしていました。

彼の脳裏にフラッシュバックしていたのは、幼い頃の記憶でした。

日本に来たばかりの彼ら母子は、まだ日本語を理解できていないことを揶揄われ、酷い時には家の周りにおいてあった荷物を壊されたこともあったのです。
母国語のクメール語で叫んでも、喚いても、誰も助けてくれませんでした。

だから。
豪士は逃げたのです。

以下、結末までのネタバレになります。ご注意ください。


スポンサーリンク


【楽園】あらすじ(ネタバレ)

空を焦がす炎

神社ではお神楽が始まっていました。

(C)2019「楽園」製作委員会

大きな束にした藁に火を点けて舞う神事です。

紡はお囃子の笛を吹いていました。

広呂はそんな彼女を口説いていましたが、紡は相手にしません。

自転車のタイヤをパンクさせたのは広呂だったのです。

呆れていると、比呂は紡にキスを迫ってきたのですが、その時、善次郎が犬を連れて通りかかり、助けてくれたのです。

彼の愛犬の名前はレオ。

束の間、ほっとした紡には…その直後にとんでもない事件が起こることなど、まだ予想もできませんでした。

豪士が踵を返して走り去ったことに気付いた男たちは追ってきました。

(C)2019「楽園」製作委員会

必死に逃げた豪士は街道沿いの蕎麦屋に逃げ込みましたが、取り囲むその包囲網は狭まるばかり。

彼は店の中で暴れ、明かりを消し、そして厨房に合った灯油をかぶったのです。

震える豪士は、ライターを握り締め、呟いていました。

「アイカちゃん…アイカちゃん、アイカ…」

そして___空を焦がす炎が燃え上がったのです。

万屋(よろずや)善次郎

その翌年。

紡は東京の成果市場で働いていました。

友達も作らず、贅沢することもなく。

ただ、黙々とダンボール箱を台車に載せて走り回る日々を過ごしていました。

その頃。
善次郎は黙々と村の人々のために働いていました。

(C)2019「楽園」製作委員会

Uターン組の彼は、10数年前に親の介護のためにこの村に帰ってきたのですが、妻に先立たれて、今ではレオと“二人きり”で暮らしていたのです。

彼は60代でしたが。

草刈りや側溝の掃除、電気の配線など、限界を超えた80代だの90代だのばかりの村で頼まれ事は何でも聞いていたので、“万屋善次郎”と呼ばれていたのです。

彼は養蜂業を細々と営んでおり、そのハチミツの評判が良いことから、これを使って村おこしができないかと考えていました。

狂っていく歯車

村では昔から、意味があるような、そうでないような、ただの宴会のような寄り合いが行われるものです。

酒を飲みながら年寄りの話を有難がって拝聴するような場でしたが、善次郎は自分の思い描く村おこしのプランを話してみると、それなりに反応は良かったので、ほっとしていました。

そこに一人の見覚えのある女性がいました。

世話役の一人伊作の娘・久子です。

善次郎がハチミツを収めに行く農作物の販売所でエプロンをかけて働いている女性でした。

「出戻り」と言われた彼女は中学生の息子と2人で古いアパートに住んでいました。

その風呂場の不具合を見てくれ、と伊作に頼まれたことがきっかけで、善次郎と久子は親しく話をするようになるのですが。

こうした付き合いは、田舎ではすぐに人の口の端に上るのです。

ほどなく、善次郎のまわりでトラブルが起こりました。

彼が役所に村おこしのプランを提案したところ、予算が降りる算段が付いたのです。

しかし「それは村の世話役である伊作の頭越しに話を進めた」という、許されない行為だった、と周囲の年寄りたちは激怒し、伊作と共に善次郎のことを村八分にしていったのです。

善次郎は、算段がついたら世話役らに説明しに行くつもりだった、と釈明しようにも、頑なに拒絶されてしまいました。

一言の弁明も許されないままに、出したゴミも戻され、揚げ句、ないことないこと村中に広められて四面楚歌になってしまったのです。

ハチミツを納品に行ったら、顔見知りの男から「外国人に水源地の土地を売ろうとしているんだってな?!」

恫喝されましたが、身に覚えもないことばかりで、ただ呆然とするばかりです。

そしてある時、善次郎は警察に話を聞かれました。

12年もの時を経て。

「あの事件の直後にあなたが車を買い替えた、という情報提供がありまして」

…まるで、愛華の事件の容疑者であるかのように、善次郎を陥れようとするものまで出てきた、というのです。

そのうち、家にまで様々なかたちで怒鳴り込まれるようになり、そのうちの一人の老人をレオが噛んでしまいました。

のたうち回る男の同行者が善次郎を棒で打ち据え、善次郎は、したたかに腰をやられ、身動きが取れなくなってしまったのです。

再会

ある朝。

紡は市場の中に、見知った顔を見つけました。

広呂が、彼女を追って同じ市場で働き始めたのです。

(C)2019「楽園」製作委員会

初めて二人で東京の街中を歩き、居酒屋でビールを飲む、そんなデートをしました。

腹を割って話すことも、村ではできなかったことでした。

楽しいことに背を向けてきた紡は、広呂に言いました。

「市場にいると、いろんな所から果物や野菜が来るでしょう?
北海道のジャガイモや、沖縄のパイナップル…栃木のレンコン…。
そういうの、見てるの、楽しい…」

慎まし過ぎる彼女の喜びに苦笑する広呂でしたが。

あの村の閉塞感がないところでの二人は、少し素直になれていたのかもしれません。

ぶらぶらと夜の雑踏のなかを歩いているとき。

広呂は紡に、あることを言ったのです。

骨をうずめる

久子は村の様子がだんだんおかしくなっていくことに気付いていました。

両親を温泉に誘っていたのですが。

父親が機嫌を損ねてしまい、その時「善次郎には近づくな」と母親に言われて、どうしても捨てておけずに彼の家を訪ねたのです。

すると、それまでは自由にしていたはずのレオが大きな檻に閉じ込められており、顔は目ヤ二でどろどろになっていたのです。

「病院に連れて行った方が…」

そう言った彼女に、善次郎は力なく答えました。

レオはどこにも動かさないよう、村の寄り合いで決められてしまったのだ、と。

殺処分されなかっただけましだったのかもしれませんが。

今までのようにじゃれ合うことも、散歩させてやることもできなくなり、ただ、檻の中に入れて守ることしか、彼にはできないのです。

家の周囲は、女物の服を着せたトルソーがいくつも並び、家の中にもそうした服が散乱して異様な光景に。

(C)2019「楽園」製作委員会

それは善次郎の妻の遺品でした。

彼はこの土地についてきてくれた妻の紀子の思い出に浸って、一緒に骨をうずめる覚悟で畑に木を植え始めたのです。

養蜂を辞め、山に入り、気に入った木を掘って持ち帰り、家の周りに植えるようになっていたのでした。

崩壊の予兆

久子はそんな善次郎を温泉に誘いました。

しかし、二人で車に乗っているところを村の年寄りに見られていたのです。

温泉は混浴で、善次郎と久子のほかには誰もいません。

二人は身の上話をし、互いの境遇に心を寄せていましたが。

ふとしたはずみで、善次郎は久子の唇を奪ってしまったのです。

一瞬の過ちの後、二人は気まずい思いでそれぞれの暮らしに戻りましたが。

村人の心無い仕打ちはさらに加速化していきました。

山の上にあった善次郎の家の墓が、赤いペンキで卑猥な言葉の落書きをされ、さらに、彼の心を壊す出来事が起きたのです。

行政代執行___顔見知りの役所の職員がやってきて、せっかく植えて枝を伸ばし始めた木々を重機で引き倒して言ったのです。

暴れる善次郎に、彼らは言いました。

山林と耕作地の区別はつけなければならない、と。

自分の土地なのに、税制が違うために好き勝手に使ってはならないのだというのです。

掘り起こされた土の中に、白いものがありました。

善次郎は、妻の骨を木の根元に埋めていたのです。

無残に荒らされたそこで、彼は、ボロボロになった地面の土を口に運びました。

(C)2019「楽園」製作委員会

二度、三度…そうするうちに、彼の瞳は正気を失っていったのです。

違う世界へ…

東京で、広呂は病に倒れて入院していました。

見舞いに来た紡の前で、眉毛も抜け落ちて、痛々しいほどの病状で、それでも彼は力なく笑ってみせたのです。

家に近い病院ではなく、東京の病院にいることにも、彼なりに理由がありました。

生まれた時の記憶がある、という広呂は、紡を追ってこの土地に来た時に、その誕生の瞬間に近い感覚を味わった…というのです。

「ああ、広い!って」

紡は、あの村の閉塞感から逃れたくて来たということを改めて実感していました。

(C)2019「楽園」製作委員会

ちょうどその頃。
彼女の元に、母親から手紙が届いたのです。

その封筒の中には、どこかで無くしたと思っていた、昔、豪士の移動リサイクルショップで買った財布が入っていたのです。

それは笛を買いに行ったあの日、彼女が豪士の車のシートに落としたものでした。

中に入っていたクリーニングの控えから辿って実家に届けられたのだというそれを見て、紡は懐かしさを覚えました。

そして、思い切って村に帰り、豪士の母・洋子に会いに行ったのです。

彼女は村の病院で清掃の仕事をしていました。

(C)2019「楽園」製作委員会

豪士が蕎麦屋で火だるまになった時。
彼が疑われた二人目の女の子は発見され、犯人も逮捕されました。
豪士は無実だったのです。

そして、洋子は豪士の暮らしていた部屋で見つけたメモをくれました。

たどたどしいひらがなで書かれたその短い手紙。

「つむぎさんはわるくない」

それは、彼女にとって、一つの救済でした。

(C)2019「楽園」製作委員会

あの時。
祭を抜け出した紡が辿り着いた…焼け落ちた蕎麦屋の火災現場で、五郎は彼女に詰め寄ったのです。

「愛華だけが死んで、どうしておまえだけが生きてる?!」

そして、無実が証明されたというのに、豪士を指して「あいつが犯人だって言ってくれっ!」と…それはまるで、愛華の事件当夜のままに、紡の心を抉っていました。

しかし洋子はもう一つ恐ろしい事実を紡に伝えていたのです。

あの日。

愛華がいなくなって、豪士も洋子も取り調べを受けました。

洋子は愛人の男のところにいて、夕方待ち合わせをして藤木家の五郎を訪ねたのですが。

二人はお互いに「一緒にいた」と警察に話していました。

しかし。

警察署の廊下で洋子が見た豪士は、口元をゆがめて笑っていた、というのです。

それが何を意味するのかまでは聞けなかったという洋子。

彼女は母国から、何らかの理由で息子を連れて逃げ、難民申請をして日本に帰化した過去がありました。

豪士の不遇な人生も、あんな無残な形で死なせてしまったことも、自分のせいだと苦しんでいたのです。

彼は母に言ったことがありました。
「日本に来た時に、ここは“楽園”だって」___母国語で呟いた豪士の声は今も洋子を苛んでいたのです。

そして、惨劇

テレビの中に見慣れた村の風景が、騒々しく映し出されました。

寂れた家屋敷の中に、赤く光るパトライトと、マスコミの群れがひしめいています。

(C)2019「楽園」製作委員会

久子はその中を潜り抜けるようにして息子とふたり、実家の前に辿り着きました。

両親を始め、近所の年寄りたちが6人、惨殺されたのです。

善次郎は、返り血を浴びて一人で山を登っていました。

腰に刺した鎌は、同様に血塗れです。

彼は自分を村八分にしていた老人たちを殺めた鎌を、自らの腹に突き立て、横に引き、まるで武士の切腹のように倒れ込んだのです。

解放

大混乱に陥った村の中で。

紡はあのY字路に立っていました。

交錯するのは、今と、あの日の光景。

あの日。

愛華はちょっと意地悪に、紡の摘んだシロツメクサの花を取り上げて自分の花冠を編むのに使ってしまいました。

それに腹が立った紡は「うちに遊びにおいでよ」と誘われても応じず、まっすぐ家に帰ったのです。

その時。田んぼの稲穂が揺れる畦道を一台の青い車が走っていきました。

その車は、Y字路の横の沢に、ダンボールに入れた犬を捨てて走り去ったのです。

紡と別れて、愛華はY字路を左へ。

歩き始めてほどなく、白い車が停まっていました。

豪士は、あの日、神社の境内でチンピラに殴られる母を守ることができず、母は愛人にそれを「意気地なし」と愚痴っていたことをバラされてしまいました。

当時の洋子は、その男の存在に依存しており、豪士はたった一人の肉親である母親に捨てられるのではないかと言う恐怖とも戦っていたのです。

車のところで泣いていた豪士に気付いた愛華は、近寄って彼にたずねました。

「遊んでくれる人がいないの?」

(C)2019「楽園」製作委員会

顔を上げた豪士の頭に、愛華は花冠を載せて、ばいばい、と言って家に向かって歩き出すのです。

豪士は、ゆらりと立ち上がり、足を引きずるようにしてその後を追うように歩き始め…___。

そしてそのY字路の手前では、まだ若かった善次郎が犬を拾っていました。

彼は犬を飼いたがっていた妻のために、その子を拾い、レオと名付けたのです。

その車の荷台には真新しい養蜂箱が沢山積み込まれていました。

___その風景は、真実なのか、紡が見た幻なのか、定かではありません。

彼女はY字路にあった不審者への注意喚起の看板を引き抜いて草むらに放り投げて捨てました。

その姿を見ていた五郎は紡に言ったのです。
豪士が死んだあの時、皆が思った___これで区切りがつけられる、と。

愛華の事件の呪縛から区切りをつけないと、生きていけない…身勝手なその村人たちが、よってたかってあんな形で豪士を追い詰めて殺したというのに。

紡は錯乱したような五郎を残して、もう一度看板を放りました。

「私は、抱えて生きていく」
泣きながらも、彼女は顔を上げて立ち上がったのです。

広呂の病気は治療が功を奏し、回復の兆しが見えてきました。

「5年生存率は50%だって…」

そう言って笑う彼の眉毛は、以前のように黒く戻ってきていたのです。

彼と初めて二人で飲んだ日。

夜の雑踏の中で「アイカ!」と呼ぶ声が聞えました。

ハッとして振り返った紡と、長い髪のかわいい女の子が振り返り、目が合ったのです。

一瞬の交錯で、そのアイカと呼ばれた女の子は友達のグループに混ざり、歩き去っていきましたが。

もしかしたら、本当に愛華だったのかもしれない、と紡には思えたのです。

そして、耳に残る広呂のことば。

「紡、俺たちの“楽園”を作って___」

(C)2019「楽園」製作委員会


スポンサーリンク


【楽園】感想とレビュー

惨い話です。

人間は、無意識にこんなに残酷になれるのか、と指先が冷たくなるような感覚に苛まれるような、そんな映画です。

下手なホラーより、ずっと怖い…。

愛華の事件は、確かに残酷です。
一人の女の子が忽然と消えてしまった。

そして、見つからない…12年後、身内も周囲もみな、彼女は「死んだ」ものとして捉えています。

写真を並べ、その不在を嘆き、そして彼女と最後に分かれた“生き残り”として紡をどこか責めるように、腫物のように扱っていたのです。

しかし。
紡自身もまた自分を責め続けていました。

畦道でシロツメクサを編んでいた時、愛華は紡が摘み取った花をぱっと横取りして自分の花冠に使ってしまいました。

それを許せなかった紡は「うちに遊びにおいでよ」という誘いを断って、彼女をY字路に残し、振り切るように去ってしまったのです。

もしあの時、愛華と2人で一緒に彼女の家に向かっていたら___彼女は生きていたかもしれない。

そう思うと、五郎に自分だけ生きていることを責めるように言われても反論できなかったのです。

そして、過疎を超えて限界集落になっていくその土地の人々のメンタリティは、ただそれだけで人を追い詰め、そして“誰か”を死なせてしまうのか、と恐ろしくなりました。

まるで魔女裁判です。

豪士を告発するように、今頃になって「あの日、用水路で…」と話し始めて彼を追い詰める端緒を開いたのは、実は紡の父親でした。

あの場にいた者たちが皆、何かを狂わせて行ったようにしか見えないのです。

そして、それは善次郎に関しても、同様です。

“良かれと思って”してきたことが全てひっくり返される、それは、彼にとって恐怖を超えたものだったのではないでしょうか。

子供の頃から味わってきた他者からの暴力と恐怖がフラッシュバックした瞬間、彼には逃げることしかできなかったのです。

広呂が言っていた、同級生で地元に残ったのは自分たち二人きりだった、という話。

後に二人とも東京に出てしまったことから、もうあの村に、同級生いない、という状況は、この先、村が衰退の一途をたどる、その予兆を超え、既に現実として降りかかっているのに、大人は、そして老人たちは、そこから目を背け、頑迷に、そして大事なものをはき違えて暴走を繰り返していました。

この物語には、モデルになった事件が実際にありました。

ドキュメンタリーではなく、フィクションではありますが。

その裏側に潜む心の闇を、吉田修一氏が切り拓いて覗き込むようにして見つめ、小説に再構築したものです。

鋭い刃物を突き付けられる、というよりも。
太い針で心臓が貫かれるような痛みを感じて、思わず蹲ってしまいそうになる、そんな映画でした。


綾野剛さん。
大好きな役者さんなのですが。
立ち姿、瞼の動き、表情、声、その全てが痛みを伴って訴えかけてくるようなお芝居でした。


脇を固める一人一人に至るまで、一部の隙も無い布陣でした。


人はそうしなければ生きていけない理由を持っていて、あんなふうに頑迷になっていくのかもしれませんが。
そうでなくても生きていく方法はいろいろあるんだよ、と言ってあげたい。


マイノリティが、さらなるマイノリティをいたぶるって、怖すぎる。


はい。剛くん、本当にすさまじい勢いでお芝居しています。
彼の顔、彼の声なのに、綾野剛に見えない。
二時間、全力で豪士を生きています。



スポンサーリンク


まとめ

主人公の三人が素晴らしいのは勿論ですが。

周囲を固めるバイプレーヤーが素晴らしい。

そして綾野剛さんの出演作と彼らの絡みを見ていると、ちょっと嬉しくなる、そんな皆さまです。

佐藤浩市さん。
「ロクヨン」では主人公の彼は、剛くんの上司でした。

柄本明さん。
「天空の蜂」では福井県警の鬼刑事で、剛くん演じるテロリストを追い詰めて壮絶な対決をしたのです。

そして、周囲に溶け込みながら“普通の人”を見事に演じる役者さんが一人。

大塚ヒロタさん。
実はドラマ「空飛ぶ広報室」で剛くんの同僚の自衛官として広報室の中にいた方です。

眼鏡をかけて生真面目にパソコンを叩いていた彼は、今回、局面となるシーンに市役所の職員として登場します。

オーラの消し具合が絶妙で、本当に“そういう人”にしか見えない面白みがあります。

そんな彼は、先日、ドラマ「ボイス」一話で警察官を、「コウノドリ」では救急隊員など、リアルにその職業の顔を見せてくれる人です。
CMなどにも出演されていますので、チェックしてみてくださいね。

それにしても、舞台あいさつに金髪赤ジャケットって、どこのカズレーザーですか。

でもね。

なんだか、彼らがこんなふうに笑ってくれていることにほっとしてしまいます。

あの話はフィクション。
泣いている豪士も、苦しんでいる善次郎さんもいない。

そうしてふと現実に戻り、安堵するのです。

この記事のURLをコピーする
映画【蜜蜂と遠雷】ネタバレあらすじ!光溢れる世界に、響き合う想い。感想レビューも 音楽とは、なんと業の深いものであろうか___。 美しい音色を奏でようとするたびに、人は血を吐く思いで全身全霊を傾け、しかし...

映画【蜜蜂と遠雷】ネタバレあらすじ!光溢れる世界に、響き合う想い。感想レビューも



スポンサーリンク