映画ネタバレと感想

映画【娼年(しょうねん)】ネタバレ(あらすじ)と感想評価「リョウ(松坂桃李)の透明な微笑み」

(C)石田衣良/集英社 2017映画「娼年」製作委員会

石田衣良の原作発表から10数年、松坂桃李という稀有な役者の登場で2016年夏に舞台化され、満を持しての映画化となった「娼年」。

公開当初から過激な性描写ばかりが話題になりましたが、主演の松坂さんが「それが気になるのは最初の15分だけ」と仰る通り、この物語の本質はその先にあったのです。

ここでは、映画「娼年」のあらすじを「ネタバレなし」、「ネタバレあり(結末まで)」のパートに分けてご紹介します。

後半では、感想評価について書いていますので、そちらもぜひご覧ください。

【娼年】予備知識

「娼年」の予告動画

公開日(日本):2018年4月6日

監督:三浦大輔

キャスト
松坂桃李(森中領・リョウ)
真飛聖(御堂静香)

冨手麻妙(咲良)
猪塚健太(平戸東・アズマ)

桜井ユキ(白崎恵)
小柳友(田島進也・シンヤ)

馬渕英里何(イツキ)
荻野友里(主婦)
佐々木心音(紀子)
大谷麻衣(ヒロミ)
階戸瑠李
西岡徳馬(泉川)

江波杏子(老女)※遺作

作品概要
東京の片隅に、リョウ(松坂桃李)と言う学生が暮らしていました。

行きずりの女の子と遊んだり、バーでアルバイトをしたり…自堕落と言うわけでもありませんが、何事にも目的を見いだせずに暮らしていたのです。

そんな彼の目の前に、これまで見たことがないほど美しい女性が現れました。

(C)石田衣良/集英社 2017映画「娼年」製作委員会

美堂静香(真飛聖)というその人は、彼の運命を大きく変えていったのです。

【娼年】あらすじ(ネタバレなし)

大学生のリョウは、しかしその学生生活にも、行きずりの女の子との情事にも、まして真面目な恋愛にものめり込むことができない無気力な日々を漂うように生きていました。

週に一回しか学校に行かない彼のために、同級生の恵(桜井ユキ)はせっせとノートを取ってバイト先のバーに通うのですが、友達以上というわけではありません。

そんな日々の中で、ある夜、ホストをしている友達のシンヤ(小柳友)が美しい女性を伴ってバーを訪れました。

「俺の憧れの人」
そう紹介された御堂静香は、現実味のない透明な美しさをたたえた女性でした。

思いがけないことに、彼女はリョウに「うちで働いてみない?」と声をかけるのです。

(C)石田衣良/集英社 2017映画「娼年」製作委員会

それをきっかけにして、リョウは想像もしていなかった世界へ足を踏み入れることになったのです。

以下、結末までのネタバレになります。ご注意ください。

【娼年】あらすじ(ネタバレ)

美しい人の意図

御堂静香がリョウを誘った場所は『Le Club Passion』。

そこは彼女がオーナーを務める会員制の高級ボーイズクラブだったのです。

戸惑うリョウに、静香はそこにいた若い女性・咲良(冨手麻妙)を抱くように命じました。

それは静香が彼をみる“情熱の試験”だったのです。

自分本位の行為に、静香は不合格を言い渡しましたが、咲良がとりなしたことで静香に受け入れられ“娼夫”としての仕事を始めたのです。

そこは、リョウの想像を超える世界でした。

埋められない心の虚

彼を求め、買う女たちは、皆とても美しく、成功している人種に見えました。

ただ、自分が理想と思える人と巡り合えなかったり、夫との関係で満たされない思いを抱えていたり…。

さらには、夫婦関係を深めるために、目の前でリョウに妻を抱いてもらいたい、という夫からの依頼などもあり、リョウは困惑しつつもその世界にのめり込んでいくのです。

静香のもとで働くトップクラスの男娼・アズマ(猪塚健太)は、そんな彼を見て「売れっ子になるよ」と予言していたのですが、その言葉通りにリョウを求める女性らは増えていくのでした。

その成長ぶりに、静香は「ご褒美」をあげる、と言われるのですが。

リョウが求めたのは、静香でした。
しかし彼女はそれを拒むのです。

静香には、誰にも告げたことのない秘密がありました。

そしてその頃、リョウにも大きな変化が訪れたのです。

発覚、そして…

雰囲気の変わったリョウに違和感を持った恵やシンヤが、彼の仕事に気づいてしまいました。

そこから綻びが広がるように摘発され、静香は検挙、『Le Club Passion』は立ち行かなくなったのです。

彼女は、抱えていた者たちの秘密を守り、警察の手が及ばないように逃がしました。

そんな静香からリョウにあてられた手紙には、思いもよらないことが書かれていたのです。

リョウの母は、彼が幼いころに突然亡くなりました。
しかし、その事情は幼い彼に語られることはなく、その謎とともに、虚無感だけが残り、無気力な人生を生きることになってしまったのです。

彼のなくした“ピース”…それは母親の存在でした。
きれいに装ってどこかに出かけた彼女は、そのまま彼の待つ家に帰ってくることはなかったのです。

静香は、彼女のことを手紙に綴ってくれました。

リョウの母は、リョウと同じ仕事をしており、そのさなかに亡くなったのだということ。

そして、静香もまた同様で、その頃にHIVに感染していたのだということ___まるで、その報いであるかのように、若い日に産んだ娘の咲良はその運命を背負い、耳の聞こえない子供として生を受けた、というのです。

リョウを拒んだのは病気のせいであり、彼を認めていなかったわけではなく…そして、巡り合ったことには理由があったのだ、と静香はしたためていました。

彼の微笑に

一年後___静香の跡を継いで咲良が『Le Club Passion』を復活させました。

アズマとリョウはそのパートナーとして働いています。

昔の顧客であった老女の元を訪れたリョウの微笑みは柔らかく、その優しさに彼女は幸福そうに身を委ねるのでした。

【娼年】感想と評価

まず最初に、この映画は過去に同じ監督が舞台作品として脚本・演出を担当して松坂桃李さんが主演していた、ということを知って驚きました。

これをライブで、しかも衆人環視の舞台上でどうやって演じると言うのか?!

しかも松坂桃李と言えば大人気の俳優で、そのイメージやら、守るべきものもたくさんあるだろうに、最初からがつんと頭を殴られるようなショックを伴うほどの畳みかけるような性描写を全力で演じていたとは…。

しかし、そのプロセスがあったからこそ、同じ監督で作られたこの作品がこれほどまでの安定感を持っていたのか、と納得もしました。

松坂さんがおっしゃるには、確かに過激だけれど、性描写は15分も見ていれば慣れて、そのうちに飽きてくる、とのこと。

最初はその激しさに驚き、観ている側が固まってしまうほどでしたが。

そのうちに、だんだんリョウの表情が変わっていき、彼の持つ資質・本質が見えてくるとむしろほっとして、女性らが癒されていく様子に、逆に彼自身が自らを慰めるかのようにその仕事を続けているように見えてくるのです。

(C)石田衣良/集英社 2017映画「娼年」製作委員会

女性らが求めているものは目先の性欲を満たすものではなく、自身をまるごと認めてもらいたいという自己肯定欲なのでは、と感じました。

知的で美しく、社会的にも十分魅力的な女性たちですら、こんな虚無感を抱えて満たされずに苦しんでいる___その欠けた部分にぴたりとはまったのがリョウの存在だったのでしょう。

恐らくこんな“男の子”はどこにもいません。
ある意味、都会のファンタジーです。

しかしそれでも、この作品を観たら、同じようなものを抱えて生きている頑張り屋の女性らの心には、ふんわりとした温かいものが残るのではないでしょうか。

最初は、ただ興味本位で見ていいと思うのです。
松坂桃李の肉体は、十分にその価値を持っています。

しかし、それだけでは終わらない。

そんな不思議な作品だった、と思っています。

まとめ

この作品には、美しい女性が何人も登場しますが、もっとも意表を突いたのが江波杏子さんの存在ではないでしょうか。

撮影当時でも御年70を過ぎていましたが、その艶やかな美しさ、存在感、視線を巡らすしっとりとした風情は素晴らしいものがありました。

きれいに引いた口紅の色も鮮やかに、暮らしていた部屋の風景やまとう空気もすべてが彼女を作り上げているようで、彼女が登場するシーンは完成された一人の女性の人生そのものを表しているようでした。

役名は「老女」というのですが。
“女は灰になるまで女”だという言葉を思い出しました。

しかしそれは決して嫌なものではなく。

その心意気は素晴らしいものだった、と感じました。

結果的に、この映画が遺作となってしまったのだと知った時には、観ておいてよかった、と思ったものです。

リョウが出会う女性は誰もが美しく、それぞれの人生を真っ当に歩いてきていたはずが、ただ一つ満たせないピースを求めて震えているように見えました。

「寂しさ」にもつながるその欠けたピースのために、コンプレックスが大きく膨らみ、人生すら肯定できずに泣いている彼女らのその体を、リョウは黙って受け止め、心ごと抱きしめて癒す…彼自身がまさにそうした“虚”を抱えて生きる希望を見いだせずにいたからこそできることだったのかもしれません。

法的に言えば、彼のしていることは犯罪です。

だからこそ、静香も追われる身になりましたが、それでも求める人はやまないのでしょう。

物語の結末に笑顔のリョウや咲良がいて、穏やかに彼らが生きているのを見届けたとき、何とも言えない安ど感がありました。

この物語を語るとき、確かに性描写の過激さ抜きには評価はできないかもしれませんが。
本当に、15分みればその種類の過激さには慣れて、最後には飽きるほどです。

これはむしろその先にある“心”の部分をこそ観てほしい、感じてほしい、という監督の意図なのではないか、と思うようになりました。

(C)石田衣良/集英社 2017映画「娼年」製作委員会

松坂桃李さんの表情の変化、その美しさが研ぎ澄まされていく様子をじっくりと味わいながら、癒されてみてください。