映画ネタバレと感想

映画【翔んで埼玉】ネタバレ(あらすじ)と感想評価「悪名は無名に勝るby埼玉県知事」

(C)2019 映画「翔んで埼玉」製作委員会

魔夜峰央さんによる原作「翔んで埼玉」が刊行されたのが1982年。

当時「パタリロ!」などで人気を博していた魔夜さんが住んでいたのが所沢市だったことや、一説によるとタモリさんが広めたと言われる「ダサイタマ=ダサい」という言葉が日本中に浸透してきた、そんな時期にまるで一発ギャグのようなテンションで描かれた、未完の作品でした。

BLというジャンルの黎明期でもあり、不思議な魅力にあふれた自虐=埼玉ディスと混沌にまみれたその作品が、なぜか復刻版として復刊したのが2015年ですが、本屋でそれを見かけた武内英樹監督がその不条理ワールドをとんでもない再現度で作り上げたのが、この劇場版「翔んで埼玉」です。

ここでは、映画「翔んで埼玉」のあらすじを「ネタバレなし」、「ネタバレあり(結末まで)」のパートに分けてご紹介します。

後半では、感想評価について書いていますので、そちらもぜひご覧ください。

【翔んで埼玉】予備知識

「翔んで埼玉」の予告動画

公開日(日本):2019年2月2日

監督:武内英樹

キャスト
二階堂ふみ(壇ノ浦百美)
GACKT(麻実麗)
伊勢谷友介(阿久津翔)
中尾彬(壇ノ浦建造)
武田久美子(壇ノ浦恵子)
京本政樹(埼玉デューク)
麿赤兒(西園寺宗十郎)
益若つばさ(おかよ)
加藤諒(下川信男)
間宮祥太朗(埼玉県人の青年)
竹中直人(神奈川県知事)

ふなっしー
ふっかちゃん
チーバくん

ブラザートム(菅原好海)
麻生久美子(菅原真紀)
島崎遥香(菅原愛海)
五十嵐春翔(成田凌)

作品概要
この作品は大きく二つのパートにわけられています。

現代の埼玉県・熊谷市に住む菅原さんご一家の物語と、かれらがたまたま耳にしたラジオドラマ…埼玉を解放するために戦う人々の都市伝説の物語です。

ごくごく庶民的な菅原さんご一家の様子と対照的に、まさに魔夜峰央ワールドをそのまま実写化したともいえるゴージャスな麗と百美の世界。

埼玉をディスりまくることで、逆に埼玉をこよなく愛する人々を浮かび上がらせる、実はこれ以上はないほどの郷土愛にあふれたストーリーになっているのです。

その最前線に立つ麻実麗を演じるのがGACKTさん。

まさかの高校生役と言うことで最初は断った、というそのキャラクターでしたが、見事に素晴らしいお芝居を見せてくれました。

彼に“恋”をしたトップエリートの少年・百美は初めての男役を演じた二階堂ふみさん。

この二人の姿をただ追っていくだけで真面目に涙が噴き出すほど笑える素敵な映画になりました。

【翔んで埼玉】あらすじ(ネタバレなし)

現代の埼玉県熊谷にて…

埼玉県熊谷市、とあるうだるような真夏の暑い日、菅原家の夫婦(ブラザートム・麻生久美子)と娘の愛海(島崎遥香)は車で東京に向かっていました。

今日は愛海の結納です。

相手は浦和に住む五十嵐春翔(成田凌)。

二人は結婚したら東京に住むのだと決めており、愛海は「やっと埼玉を離脱できる~!」とウキウキでした。

そんな車内にながれていたのは、父・良海曰く「埼玉県民がこよなく愛する」というFMラジオのNACK5(ナックファイブ)。

そこから流れたのは、不思議な都市伝説の物語だったのです。

(C)2019 映画「翔んで埼玉」製作委員会

埼玉県民が迫害されていた時代のこと

20世紀末、埼玉県民は、東京都民からひどく迫害されておりました。

埼玉県民は、通行手形なしには県境の関所から東京都に入ることも許されず、その手形なしでは東京の街を歩くことすらできなかったのです。

自分たちでは立ち向かう事すらままならない、強大な東京都の権力に涙しながらも、虐げられた埼玉県民たちはいつの日にか自分たちを解放してくれる救世主が現れるに違いない!と信じて耐え忍んでいたのでした。

“彼”の帰還

そんなある日、一人の高校生がアメリカから帰国しました。

代々の東京都知事を輩出してきた超名門“白鵬堂学院”に転入してきた彼は麻実麗(GACKT)。

東京でも有数の資産家の御曹司であり、頭脳も容姿も素晴らしく、トップクラスの生徒らが集められているA組の生徒らからも羨望のまなざしで見つめられていました。

白鵬堂学院の生徒会長である美少年・壇之浦百美(二階堂ふみ)は現・東京都知事である壇之浦建造(中尾彬)の一人息子であり、学院に厳格なルールをつくり、君臨していました。

彼の将来の夢は、父の跡を継いで東京都知事となること。

麗に興味を持った彼は、自ら学内を案内することにしたのですが、そんな中でちょっとした騒動が起こりました。

白鵬堂学院の生徒らには厳格なカーストがあり、その出身地、居住地によりクラスが選別されていたのです。

その末席、Z組には、親の転勤などで東京に来て大金を積んで入学したものの、世間と同様に酷い扱いをされていた元・埼玉県民の生徒らがいたのです。

「埼玉県人にはそこら辺の草でも食わせておけ!」

彼らを差別し、ぞんざいな言葉を吐く百美に批判的な態度をとる麗。

最初こそ対立したものの、百美は次第に麗に惹かれていくようになり、自宅に招待するまでになったのです。

そこで麗は、壇之浦都知事に仕える執事・阿久津(伊勢谷友介)に出会うのです。

彼はひと目麗を見て言いました。
「貴様、埼玉だな…?」

そう。
彼は複雑な生い立ちのもとに埼玉の人々思いを背負って生きていた“隠れ埼玉県人”だったのです。

(C)2019 映画「翔んで埼玉」製作委員会
以下、結末までのネタバレになります。ご注意ください。

【翔んで埼玉】あらすじ(ネタバレ)

二人の逃避行

百美に付き合って遊園地にやってきた麗の前に、彼の家に仕えるメイドのおかよ(若益つばさ)が現れました。

彼女は幼い息子にせがまれて遊びに来ていたのです。

麗と同様に“埼玉解放戦線”のために働いていた彼女でしたが、通行手形を持っていなかったことからSAT(埼玉急襲部隊)に追われ、麗の前で連行されてしまい…彼女らをかばおうとしたことから、麗自身が埼玉県人だということが発覚、“通行手形”という制度を打破すべく戦っていたことが露見してしまったのです。

その正体に驚き、うろたえる百美でしたが。

「一緒に来るか…所沢へ…?!」

麗に魅入られていた百美は、東京都民として約束されていた地位も名誉もすべて投げうって、彼についていく決意をしたのです。

立ちはだかる千葉県人の猛威

池袋に身を隠した麗と百美でしたが、警戒が厳しくなった東京都の県境を避け、茨城を経由して埼玉を目指すことを決意しました。

その道は険しく、やっともぐりこんだ列車がヌーの群れに止められてしまうなど、トラブルは尽きません。
「ここはサバンナか?!」
茨城も、百美の叫び声がかき消されるほどの秘境っぷりでした。

そんな二人を追って現れたのは壇之浦家の執事、阿久津。

その正体は千葉解放戦線のリーダーだったのです。

彼は東京都知事に近づくことで千葉県人の権利を認めさせようと秘密裏に動いていたのでした。

埼玉を巡って、東京だけでなく、出し抜いて自らの地位を向上させようとする千葉県人、そして裏で暗躍している神奈川県知事(竹中直人)らが陰謀を巡らせていたのです。

辛くも彼らの手を離れて埼玉県に入った麗と百美。

麗の父、埼玉解放戦線の有力者であった西園寺は幼い麗を東京でも有数の名家である麻実家に養子に出すことにより、その都会指数(東京都民らしさ)を上げ、解放のための闘士に育てさせたのです。

その西園寺もSATの手に落ちた今、彼らが頼れるのは謎の人物・埼玉デューク(京本政樹)のみでした。

初めて足を踏み入れた埼玉で、百美は病に倒れます。

「サイタマラリア」小型春日部蚊が媒介する風土病でした。

必要な血清は東京にしかありません。
その治療のために立ち上がったデュークでしたが、銃撃され、百美も奪還されてしまったのです。

(C)2019 映画「翔んで埼玉」製作委員会

父の遺志を継いで…!

所沢にあった西園寺のアジトは急襲され、またデュークの死が流布される中、麗は自分の出生の秘密を知るのです。

麗の本当の父親はデュークでした。

西園寺はその兄であり、麗を預かって育てたのだというのです。

麗は、その遺志を継いで埼玉解放戦線の最前線に立つことを決めました。

ちょうどその頃、千葉解放戦線が荒川越しに埼玉に攻め込んでくるという情報が舞い込みました。

麗は彼らを流山で食い止めるべく、迎え撃とう!と檄を飛ばしますが。

長らく圧政に苦しめられて無気力になった埼玉解放戦線の支部長らはその言葉に反応しませんでした。

麗は言うのです。

___他県が埼玉を何と呼んでいるか知っているか?
ダサイタマ、くさいたま、田舎くさいたま、古くさいたま、アホくさいたま…

悔し涙を流しながらその言葉を絞り出す彼の前に一人の少年が現れました。

彼・下川信男(加藤諒)は白鵬堂学院のZ組の生徒であり、いつか麗に救われた一人だったのです。

「埼玉は、何もないけど住みやすくていいところじゃん!」

彼の言葉に鼓舞されて、支部長たちもその心の奥底にあった郷土愛が再燃し、かくして江戸川の河川敷に強大な陣地を構築して激突することになったのです。

(C)2019 映画「翔んで埼玉」製作委員会

百美の戦い

そのころ、連れ戻された自宅で目覚めた百美は、父親である壇之浦都知事が通行手形を発行することで東京都が長年悪辣に蓄財していたことを突き止め、その在処を求めて群馬県の赤城山を目指したのですが、あろうことか、そこはプテラノドンが飛び交い、沼から怪物が現れるとんでもない秘境だったのです。

現住民らにつかまってしまった百美でしたが、それもこれもすべてが、悪事が露見しないよう張り巡らされた演出であり、他県の者たちが秘密に近づかないように巧妙に仕組まれた罠だったことが判明したのです。

江戸川を挟んで対峙した両解放戦線は、出身地対決を展開し、千葉側がX JAPANのYOSHIKIの旗を出すと、埼玉側はアルフィーの高見沢俊彦の旗を出す、と言うように互いの戦力を誇示しあうのです。

千葉側が真木よう子と桐谷美鈴を出せば、埼玉側は反町隆史と竹野内豊と、持てる駒を放出していくのですが…千葉が小倉優子と小島よしおを…さらに最終兵器・市原悦子を繰り出してきました。

とうとう橋の上で両陣営が直接対決に及ぶかと思われていた頃、その様子を都庁では壇之浦都知事と神奈川県知事がそろって高みの見物を決め込んでいたのです。

(C)2019 映画「翔んで埼玉」製作委員会

本当の敵とは?!

埼玉・千葉の両解放戦線は、互いに潰しあうべきではなく、真の敵は東京都、そして都知事だと気づいたとき、そのエネルギーは一気に新宿へと向かいました。

警官隊を蹴散らして進撃する彼らを、もうだれも止められません。

その後押しをするように、百美は真実を記したビラを、都庁の窓からまき散らしたのです。

「ごめんなさい、お父さん…!」

尊敬していた父親の悪事を暴くことで、彼はその愛に殉じると決めたのでした。

東京都の権威は失墜し、都知事は逮捕され、その悪事は全て暴かれました。

埼玉と千葉を長い間苦しめていた制度は瓦解し、麗と百美は新しい人生を共に歩むことを決意したのです。

愛海の受難、そして___

車が結納の会場に着いたというのに、ラジオドラマにのめり込んでいる両親は麗と百美の愛の行方にむせび泣いて感動していたのです。

母の真紀が「よかったねぇ…まるでロミオとジュリエットみたい…」とうっとりしているのを「いや、それ、男同士だし…」と冷めた目で見る愛海。

気づくと、婚約者の春翔の赤い車も停まっていたのです。

驚いて愛海がその車に駆け寄ると、春翔が浦和レッズのタオルであふれる涙を拭いながらも号泣していました。

彼とその親もNACK5の都市伝説を聴いていたのです。

感動のあまり、春翔は言いました。

「結婚したら春日部に家を建てよう!」

(C)2019 映画「翔んで埼玉」製作委員会

日本埼玉化計画

騒動の責任を取って逮捕された麗でしたが、埼玉解放戦線は勢いを増して新しいプランを立てていました。

埼玉を中心にして産業を起こし、東京にむけて鉄道の路線を増やし、俗に埼玉都民と言われる大勢の埼玉県民を東京に送り込み、そしてそこから全国各地に“埼玉”ブランドを進出させていくのだというのです。

都市伝説の声の主

NACK5のスタジオで都市伝説のドラマを語っていたのは、百美でした。

伝説の闘争から積み重ねてきた埼玉化計画は、とうとう「世界埼玉化計画」という壮大な野望に着手することになったのです。

多くの埼玉県民が集うその場所に現れたのは麗と百美の二人。

彼らはレジェンドではなく、今なお共に手を取って埼玉のために戦っていたのでした。

【翔んで埼玉】感想と評価

ぶっちゃけ、県民です。
そして原作は遥か昔の雑誌掲載時に読んでいました。

魔夜峰央さんの漫画は、どれもこれも実写化は難易度がとてつもなく高いものですが。

それをこういう風にぐいぐい引き込むような展開にもっていくとは…武藤監督は天才か?!と思いました。

彼はもともと「のだめカンタービレ」のドラマ版・劇場版を手掛け、近年では「テルマエ・ロマエシリーズ」、さらに稀にみる純愛映画の「今夜、ロマンス劇場で」というようにふり幅の広い作品を手掛ける方であり、そして千葉県出身です。

東京都に対してもっていたコンプレックスと、埼玉県に感じていたシンパシー。
そんなものが、本屋でたまたま見つけて手に取った復刻版「翔んで埼玉」に魅入られて、こんなものを作ってしまったのだ、という…運命とは本当にわからないものです。

この作品の中には、埼玉県民も知らなかったような埼玉の情報が詰まっています。

ただの笑える映画と言うわけではありません。

観終わったときに、県民はふと思うのです。

「何もないけど、いいとこ、だよなぁ」と。

主要キャストさんと監督の表敬訪問をうけた上田県知事がおっしゃいました。
「悪名は無名に勝る」と。
そして、茨城や青森はこんな風にディスれない、もしやったらとんでもないことになる…と口を滑らせたのです。

そう。

埼玉県民はちょっとくらいのディスりは最早気にも留めることはありません。

大らかで穏やか。

何もないけれど、いろんないいものが揃ってる…そんなことを県民が再確認してしまう、かもしれない…そんな映画でした。

まとめ

全てが終わったところで流れるのがはなわさんの歌う主題歌「埼玉県のうた」です。

これもまたディスっているようでいて、すばらしい郷土愛にあふれた歌詞の波状攻撃です。

はなわさんは佐賀出身ということで知られていますが、実は春日部の生まれであり、この歌はもう10数年も前に作られたものでした。

それがこうして多くの人々に広まることになったわけですが、また大きな話題になったのが、このカバーをGACKTさんが披露したことでした。

「FLYING 砂炒魔(フライング サイタマ)」

恐らくはエイプリルフールだと思われますが。
本気度は凄いです。

お。「こんなん見せられたら歌えなくなるわ!」と本家のはなわさんがコメントを寄せられたそうですが、これはぜひフルコーラスで聞いてみたいですね。

さて、画面のあちらこちらに埼玉のいろんなものが潜んでいるこの作品ですが。

東京の超名門校である白鵬堂学院の建物についてひとつトリビア。

白亜の建物の上に緑のドーム。

とても美しい校舎ですが、そのドームは、実は川越にある埼玉りそな銀行の建物にあるドームを合成したものです。
築約100年という美しいランドマーク的な建物から、その部分だけをもってきて、ゴルフ場のクラブハウスに載せたようです。

東京の頭を押さえているのが埼玉でも有数のそんな歴史と文化的価値のある建物だった…武藤監督はこのあたりについては多くを語ってはいませんが…そんな作り込みを探していくのも楽しいですよ。

埼玉県民は言うに及ばず。
東京の人にも、千葉や神奈川、茨城、そして全国、全世界の人々に見てほしい映画です。
これを見て文句を言う人、恐らくいないんじゃないだろうか、というほど、いろんな意味で「平和」な作品でした。