映画ネタバレと感想

映画【バイス】ネタバレ(あらすじ)と感想評価「影の大統領をクリスチャン・ベールが熱演」

(C)2018 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All rights reserved.

アメリカ史上最悪の悪事を働いた副大統領ディック・チェイニーの半生を、ユーモアたっぷりに描いた社会派作品。

チェイニーを演じたクリスチャン・ベールが、今作でも体重を20kg増減するなど、その俳優魂に注目が集まっており、ゴールデン・グローブ賞の主演男優賞(ミュージカル・コメディ部門)で主演男優賞を受賞。

アカデミー賞では、メイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞しています。

ここでは、映画「バイス」のあらすじを「ネタバレなし」、「ネタバレあり(結末まで)」のパートに分けてご紹介します。

後半では、感想評価について書いていますので、そちらもぜひご覧ください。

【バイス】予備知識

「バイス」の予告動画

公開日(日本):2019年4月5日

監督:アダム・マッケイ

キャスト
クリスチャン・ベール (ディック・チェイニー)
エイミー・アダムス (リン・チェイニー)
スティーブ・カレル(ドナルド・ラムズフェル)
サム・ロックウェル(ジョージ・W・ブッシュ)
タイラー・ペリー(コリン・パウエル)

作品概要
アメリカをイラク戦争に導いた史上最悪の副大統領ディック・チェイニーの半生を「マネー・ショート 華麗なる大逆転」のアダム・マッケイ監督がユーモアたっぷりに描きます。

クリスチャン・ベールの熱演はもちろん、脇を固める名優たちの本人そっくりな演技にも注目です。

【バイス】あらすじ(ネタバレなし)

1963年、ディック・チェイニーはイェール大学に通う大学生であったが、ろくに授業にも出ず、酒癖も悪く退学となり、地元ワイオミング州で電気工として働いていました。

働きに出ても酒癖の悪さは治らず、トラブルを起こし警察の厄介になったところ、恋人リンから叱咤激励を受けます。

リンは成績優秀の才女であったが、女性という立場上、多くの成功は望めず、チェイニーにその夢を託したかったのです。

リンから叱咤激励を受けたチェイニーは、1966年ワシントンD.Cで、連邦議会のインターシップに参加し、共和党の下院議員ドナルド・ラムズフェルドに出会います。

ラムズフェルドはセクハラ・パワハラまがいの言葉を使い、権力を振りかざす人物で、インターンシップ参加者へのスピーチでは「口は堅く」「支持を守れ」「忠実であれ」という3つの条件を叩き込みます。

このスピーチに感銘を受けたチェイニーは、ラムズフェルドの下で働くこととなり、政治の表と裏を学ぶと同時に権力への興味を抱いていきます。

ラムズフェルドは、リチャード・ニクソン政権の大統領補佐官に就任することとなりますが、間もなくラムズフェルドは失脚。

チェイニーも政界を離れますが、1974年ニクソン大統領は、ウォーターゲート事件によって辞任します。

事件に関与していないチェイニーは、政界に舞い戻ることを決意し、ラムズフェルドとともに「ホワイトハウスの乗っ取り」を企てるのでありました。

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チェイニーはラムズフェルドのもとで培った経験で、史上最年少の34歳でジェラルド・R・フォードの大統領首席補佐官となりますが、次の大統領選でフォードが敗れてしまい、下院議員選挙に出馬することになります。

チェイニーは無口で話下手なこともあり、その選挙活動での演説には目も当てられません。

さらに追い打ちをかけるように、チェイニーは心筋梗塞で倒れ、選挙活動にドクターストップがかかってしまいますが、そのピンチを救ったのはリンでありました。

リンは病気に伏せるチェイニーに代わってマイクを握り、ワイオミングの住民たちを魅了するスピーチを披露し、見事チェイニーを当選させることに成功します。

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その後チェイニーは、共和党のロナルド・レーガン政権で活躍し、ジョージ・H・W・ブッシュ政権では、国務長官を務めます。

しかし、次女のメアリーが同性愛者であることが発覚し、同性婚には反対の姿勢を見せている共和党でこれ以上の出世を望めば、メアリーがバッシングの対象になってしまうと判断し、大統領への道をあきらめるのでありました。

その後チェイニーは、石油会社ハリバートンのCEOに就任し、家族とともに幸せに暮らすのでありました。

以下、結末までのネタバレになります。ご注意ください。

【バイス】あらすじ(ネタバレ)

家族とともに悠々自適な日々を過ごしていたある日、チェイニーのもとに1本の電話がかかってきます。

ブッシュ元大統領の息子で、出来が悪いと有名なジョージが大統領選挙に出馬するといい、チェイニーに副大統領候補になってほしいと懇願してきたのです。

しかし、大統領に何かあった際の代理でしかない副大統領という地位に、チェイニーだけでなくリンも興味を持つことができず、一度は断りますが、軍や外交など様々な政策の実権を握ることを条件に受け入れることを決意します。

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2001年、ジョージは民主党候補のアル・ゴアとの選挙に勝利し、大統領に就任します。

チェイニーは、ラムズフェルドを国務長官に任命するなど、自身の周りを思い通りにいくように固めると同時に大統領権限や、自身の行使することのできる権限を徹底的に調べ上げていきます。

そして、2001年9月11日、世界同時多発テロが発生します。

テロとの戦いの裏側でチェイニーは国際法を拡大解釈し、自身の権限を最大活用していき、大統領の判断を待たなければいけない状況でも、自己判断で事を進め、国民にも自身の都合の良い方向に情報を発信していくのです。

そして、石油が豊富なイラクとウサマ・ビンラディンを強引に結び付け、ジョージにイラクへの侵攻の決断させたのです。

結果としてこのイラク戦争は、ほとんどのアメリカ国民が「無意味な戦争であった」と振り返りますが、チェイニーがCEOを務めていたハリバートン社の株価は500%上昇したのでした。

【バイス】感想と評価

ゴールデン・グローブ賞のミュージカル・コメディ部門で、ディック・チェイニーを演じたクリスチャン・ベールが主演男優賞を受賞し、体重の増減をはじめとする俳優魂が注目されていますが、その周りを固める俳優たちの演技も素晴らしいものがあります。

特にサム・ロックウェルが演じたジョージ・ブッシュ大統領は、本人が出演しているのかと思うほどです。

バイスという言葉には「副大統領」という意味はもちろん、「悪徳」といった意味もあり、まさにアメリカ史上で私利私欲のためにもっとも悪事を働いた副大統領の物語を、ユーモアを交え描いています。

最大の悪事は、やはり情報を操作し、アメリカをイラク戦争に導いたことになりますが、権力を得るためであれば家族でさえも切り捨ててしまうというところもチェイニーが最悪の副大統領と呼ばれる要因の一つです。

同性愛を告白した次女メアリーのために出世を断念し、家族への愛を見せる場面も描かれますが、長女のリズが選挙に出馬した際には、支持を得るために同性婚への反対を示すように指示し、メアリーさえも裏切ってしまうのです。

物語は全編を通してジェシー・プレモンスが演じる謎の人物カートのナレーションで進行していきます。

カートは一般の労働者で、イラク戦争では兵役までしますが、物語の最後で車にひかれてしまい、脳死となり、チェイニーの心臓移植のドナーとなります。

心無い行動や言動から「ハートレス」と呼ばれたチェイニーが、心筋梗塞で本当に心臓をなくしてしまうが、アメリカ人からハートを奪うという、皮肉に満ちた演出です。

エンドクレジットのあと、「この映画はリベラルすぎるのか?」というディスカッションに場面が移り変わりますが、政治に興味を示さない若者は、話題に興味を示さず「次のワイルドスピード超楽しそうだね」と言って幕を閉じます。

監督のアダム・マッケイは、政治に興味を持ち、まずは今起こっていることの裏側を疑ってほしいと切望しているのでしょう。

まとめ

副大統領という地味な人物の物語を、ここまでユーモラスに描いたアダム・マッケイ監督とそれを演じた俳優たちの熱演に脱帽です。

たとえ物語に共感できずとも、世界で当たり前に起こっていることの裏側ではどんな欲望がうずまいているのか、ということに興味を持たなければならないと思わせてくれる作品です。