
ギャング映画の帝王とも称されるマーティン・スコセッシ監督が放つ実録ギャング映画が『アイリッシュマン』です。
『アイリッシュマン』は2004年に発売された『I Heard You Paint Houses』というチャールズ・ブランドが著したフランク・シーランというギャングの告白本を原作にしています。
『I Heard You Paint Houses』はジミー・ホッファの失踪事件について書かれており、当時のアメリカで一大センセーションとなった伝記本です。
ジミー・ホッファという人物の失踪事件は迷宮入りとなっていたのですが、ジミーホッファを殺したのは自分だどフランク・シーランが暴露したことで原作の本は話題となりました。
『I Heard You Paint Houses』を巨匠マーティン・スコセッシが映画化した『アイリッシュマン』についてご紹介していきます。
ここでは、映画「アイリッシュマン」のあらすじを「ネタバレなし」、「ネタバレあり(結末まで)」のパートに分けてご紹介します。
後半では、感想とレビューを書いていますので、そちらもぜひご覧ください。

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【アイリッシュマン】予備知識
「アイリッシュマン」の予告動画
公開日(日本):2019年11月27日
監督:マーティン・スコセッシ:
キャスト
フランク・シーラン: ロバート・デ・ニーロ
ジミー・ホッファ: アル・パチーノ
ラッセル・ブファリーノ: ジョー・ペシ
フェリックス・ディトゥリオ: ボビー・カナヴェイル
ビル・ブファリーノ: レイ・ロマーノ
アンジェロ・ブルーノ: ハーヴェイ・カイテル
トニー・プロ: スティーヴン・グレアム
アンソニー・サレルノ: ドメニク・ランバルドッツィ
ペギー・シーラン: アンナ・パキン
作品概要
フランク・シーランはトラック運転手であり、全米トラック運転組合員長であった。
フランクはひょんなことからラッセル・ブファリーノと知り合い、マフィアの下働きを始める。
上からの命令とあれば窃盗に放火、殺人まで請け負うフランクは全米トラック運転組合のトップであるジミー・ホッファの目に留まる。
フランクはジミーのボディーガードの仕事も請け、マフィアと組合の両方で汚れ仕事をこなしていく。
次第にマフィアとトラック運転組合の間で軋轢が生まれ、フランクは折衷に奔走するのだが。
【アイリッシュマン】あらすじ(ネタバレなし)

老人ホームで誰かに話すフランク・シーラン。
フランクはラッセル・ファブリアーノと友人の結婚式に参列するため車で移動している。
物語はかこに遡る。
トラック運転手のフランク・シーランは牛肉の塊肉をレストランに運ぶ仕事をしている。
フランクは荷物の塊肉を横流しして、他の店に格安で売りつけていた。
そんな行為を繰り返していたフランクだが、ついに塊肉にを盗んでいたことがバレて裁判にかけられる。
裁判では劣勢かに思えたが、弁護士のビルによって無罪となり、裁判官はフランクを訴えた会社側を責める始末。
弁護士のビルの紹介でマフィアのボスであるラッセル・ファブリーアを紹介される。
フランクは以前たまたま、ラッセルにトラックの応急処置をしてもらったことがあり、顔見知りだった。
フランクは度胸の良さを買われ、ラッセルのマフィアの仕事を手伝うことになる。
ラッセルの仕事を淡々とこなすフランクは、ウィスパーズという男からウィスパーズのライバルのユダヤ系クリーニング店を放火するという仕事を引き受ける。
なんの迷いまく依頼を引き受けるフランクだが、放火する直前でラッセルに止められる。
フランクはラッセルに引き連れられフィラデルフィアのマフィアのボスであるアンジェロ・ブルーノに会う。
フランクが放火しようとクリーニング店はブルーノも投資していたクリーニング店で、フランクは知らなかったとはいえ、ラッセルの仲間が出資したクリーニング店を焼くところだった。
ブルーノはフランクに、仕事を依頼したウィスパーズを殺させる。
フランクはこの殺人を機にマフィアの殺し屋(ソルジャー)として次々と暗殺を繰り返していく。
使用した銃火器は川底に沈めるのだが、川底は小さな国だったら乗っ取れるぐらいの銃火器でうまっている。
【アイリッシュマン】あらすじ(ネタバレ)
ある日フランクが家に帰ると、フランクの娘のペギーが、小売店の男に店で小突かれたと妻から聞かされる。
激昂したフランクは娘を連れて店に向かい、ペギーの目の前で店の男を袋叩きにする。
ペギーは父親の蛮行を恐ろしそうな目で見る。
フランクはラッセルと仕事以外でも家族ぐるみ付き合いをする。
フランクは妻を捨て、新しい若い女性を新しく妻に迎える。
ボーリングを一緒にしたり、クリスマスを共に過ごすが、娘のペギーはラッセルに対して冷たく、話そうともしない。
ペギーはマフィアであるラッセルに畏怖の感情を抱いているようだ。
殺人や放火などの汚れ仕事を淡々とこなすフランクは全米トラック運転組合の会長であるジミー・ホッファを紹介される。
ジミー・ホッファはビートルズの人気をも凌ぐと言われるほどの人気の持ち主で、フランクはジミーのボディーガードを務めることになる。

フランクはすぐにジミーとすぐに意気投合し、公私で付き合いが深まっていく。
ジミーはフランクの仕事ぶりを高く評価し、フランクらは組合の支部長を務めることになる。
娘のペギーも世間の人気者で表向きには堅気の仕事をしているジミーに懐いていく。
ペギーはラッセルには決して懐かなかったがジミーには心を開いているようだ。
フランクは昔の自分が組合に助けてもらったように、非合法な方法も駆使して組合員たちと使用者のトラブルを解決していく。
イタリアンマフィアの悲願であるアイルランド系のジョン・F・ケネディが大統領に就任し、イタリアンマフィアは歓喜するが、ジミーにとっては都合が悪かった。
ジョン・F・ケネディと弟のロバート・ケネディはジミーが組合の金をマフィアに流して、詐欺をしているとして告訴する。
裁判にかけられたジミーはマフィアの協力も得て、陪審員の弱みを握り、裁判を有利に進めようとするが、FBIの執拗な捜査によってうまくいかない。
そんな係争のさなか、ジョン・F・ケネディが暗殺される。
ジミーは弟のロバート・ケネディも司法長官の職務を失い、ジミーに追い風が吹くと予想した。
予想の半分は当たったが、ジミーは結局裁判に負けてしまい、刑務所に収監されてしまう。
ジミーの後任として全米トラック運転組合の会長には部下のフィッツが就任した。
フィッツの組合はジミーの方針とは沿わないもので、ジミーは獄中で苛立ちを隠せない。
ジミーが収監されたのと時を同じくしてイタリアンマフィアのトニー・プロが恐喝の罪でジミーと同じ刑務所に収監される。
トニーは恐喝の罪を犯したことによってなくなってしまった年金の受給資格を復活させて欲しいとジミーに頼むが、ジミーは連邦法を盾にできることはないと断る。
食い下がるトニーとジミーは口論になり、ジミーはトニーに対してイタリア系を侮蔑する言葉を言ってしまう。
その差別発言をキッカケに2人はつかみ合いの喧嘩となる。
数年後、ニクソン大統領による恩赦によって出所したジミーは全米トラック運転組合の会長の座を取り戻すべく、現会長のフィッツを引きずり降ろそうと画策する。
組合がマフィアと癒着していることをメディアに暴露してしまうなどやりたい放題なジミー。
ジミーはトニーと再び会談するのだが、ジミーはトニーが会談に遅刻して来たこととラフな服装であることに怒り、トニーは過去の差別発言について謝罪がないことを怒り、その場でもまたも喧嘩になってしまう。
フランクはジミーに自身のお祝いである組合のパーティーに参加してほしいと話す。
そのパーティーにはジミーのことを良く思っていない面々も参加するとフランクは話すが、ジミーはフランクのためならと快く引き受ける。
フランクの祝賀パーティーが進行する中、ラッセルはジミーにマフィアへの融資を止めたことや組合とマフィアの癒着を暴露したことなど、度を超えた行いについてかばいきれないと諭すが、ジミーは聞き入れない。
ラッセルフランクに相談し、ジミーを説得してくれと頼む。
フランクはジミーに対して最終通告で、命の危険があると告げるがジミーは聞き入れない。
ビルの結婚式に向かうフランクとラッセル。
ラッセルはその道中でフランクにジミーを殺害するよう頼む。
フランクはセスナに乗ってデトロイトにいるジミーのもとへ向かう。
デトロイトに着いたフランクジミーの義理の息子が運転する車にピックアップされ、トニーの部下と共にジミーのもとへ向かう。
ジミーのもとへ着いた一行は、ジミーをピックアップし、会談が行われる住宅に向かう。
住宅に着くとフランクとジミーだけが車から降り、住宅に入っていく。
住宅には誰もいない。
ジミーは不安になって外へ出ようとするが、フランクは間髪入れずにジミーを射殺する。
フランクジミーを殺害した後、すぐにビルの結婚式に参加する。
自宅に帰ったフランクはジミーの失踪をテレビで観てしまう。
娘のペギーから何か知ってるのかと聞かれても、はぐらかすフランク。
フランクは自室に向かい、ジミーの妻のジョーに電話するが、何を話していいか分からず言葉にならない。
ジミーの失踪の捜査にともなって、フランクやラッセルは執拗な捜査を受けるが、誰1人として口を割らなかったが、軽微な罪でフランクやらっさるらは刑務所送りになる。
刑務所に入ったフランクは古傷の股関節痛を悪化させてしまい、ラッセルは心筋梗塞をおこしは身体の半分が麻痺してしまう。
刑務所ないでまフランクとラッセルの友情は変わらなかったが、ラッセルは死んでしまう。

刑期を終えて出所したフランクだが、昔の友人は死んでしまい、友と呼べるものはだれもいない。
娘のペギーからは勘当されてしまい、話もできない。
家族からも見放されたフランクは、1人寂しく老人ホームで過ごす。
老人ホームの介護士に、ジミー・ホッファを知っているかと聞いても、知らないと答える。
FBIがフランクのもとを訪れ、ジミーのことを聞くがしらを切りとおす。
ジミーはこれまでの人生を神父に懺悔する。
ある夜、ジミーは1人寂しく老人ホームの自室で夜を過ごす。
【アイリッシュマン】感想とレビュー
ギャング映画の帝王であるマーティン・スコセッシの最新作『アイリッシュマン』は期待を裏切らない、傑作であると思いました。
スコセッシといえばギャング映画のイメージが非常に強いのですか、実際には『カジノ』と『グッドフェローズ』の2作だけで、本作『アイリッシュマン』は3作目なのです。
なので『アイリッシュマン』はスコセッシの実録ギャング映画の3部作の大トリとなるのではと思います。
もしかしたら、4作目のギャング映画が控えているかもしれませんが。
『アイリッシュマン』で最も特筆すべきことは、そのキャストの豪華さに着きます。
70年代か90年代にかけてスコセッシ映画の常連だったロバート・デ・ニーロとジョー・ペシ、そしてハーヴェイ・カイテルがスコセッシ組に復帰し、アル・パチーノがついに参戦したことはスコセッシファンでなくとも驚いたでしょう。
ジョー・ペシに関しては俳優業を引退していたにも関わらず、デ・ニーロの説得によってカムバックしたくらいです。
アル・パチーノといえば『ゴッドファーザー』や『スカーフェイス』などで、ギャング映画のイメージがとても強いですが、意外なことにスコセッシの映画には出演したことがありませんでした。

『アイリッシュマン』はギャング映画俳優の雄であるアル・パチーノとロバート・デ・ニーロがギャング映画の帝王であるスコセッシの映画で共演したら、というファンの夢を叶えてくれた作品であります。
本作の語りは、ロバート・デ・ニーロが演じるフランク・シーランの1人称で展開されていくのですが、この手法はもはやスコセッシ調と名付けても良いのではないかというぐらい、スコセッシ映画でよく見られます。
古くは『タクシードライバー』のトラビスの語りから、そして『グッドフェローズ』や2010年代の『ウルフ・オブ・ウォール・ストリート』でも主人公が独白するというスタイルは一貫しています。
1人の人間の生涯を2時間に凝縮する実録映画では「語り」が映画のクオリティを左右するとても大事な部分であり、やや説明的になってしまうが、映画を分かりやすくするためあえてこの手法を多用しているのではないかと思います。
スコセッシ映画のファンであればこの一人称視点の主人公の語りが心地よく感じられると感じました。
もちろんファンでなくともリズムの良さを体感するでしょう。
まとめ
本作『アイリッシュマン』はスコセッシのギャング映画の集大成ともいえる作品になっていると感じました。
これまでスコセッシが描いてきたギャング映画と『アイリッシュマン』が大きく異なる点はギャングの晩年を描いていることです。
イタリア系のギャングであるマフィアの下で兵士として、アイリッシュマンとして多くの犯罪に関わってきた男の晩年どんなものかなのか。
組織のために、命令に逆らわずににきた男になにが残ったのか。
『アイリッシュマン』では残酷な現実が描かれていました。
フランク・シーランは家族も失い、友にも先立たれ、神に祈るも時すでに遅し。
だれも訪れて来ない老人ホームで寂しく過ごす悲惨な晩年が描かれます。
必死に組織のために尽くしてきた男にはなにも残らなかった。
『アイリッシュマン』はギャングという生業の最後を過酷に映し出す。
ギャングの末路は悲惨な老後か非業の死であると強烈に訴えた映画です。

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