映画ネタバレと感想

映画【マチネの終わりに】ネタバレあらすじ!心震わせる運命の”恋”。感想レビューも

(C)2019 フジテレビジョン アミューズ 東宝 コルク

出会って、たった三回の逢瀬。

音楽家の男とジャーナリストの女は運命の恋に落ち、しかしその想いは周囲の人々を巻き込んで、まっすぐに向き合うことが叶わないままにすれ違うのです。

平野啓一郎氏の小説のもつ透明感を見事に映像化した、静かな情熱の物語です。

ここでは、映画「マチネの終わりに」のあらすじを「ネタバレなし」、「ネタバレあり(結末まで)」のパートに分けてご紹介します。

後半では、 感想レビューを書いていますので、そちらもぜひご覧ください。

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【マチネの終わりに】予備知識

「マチネの終わりに」の予告動画

公開日(日本) :2019年11月1日

監督 :西谷弘

キャスト
福山雅治 (蒔野聡史):
世界的な音楽家、クラシックギタリスト。

石田ゆり子 (小峰洋子):
フランスの通信社に所属するジャーナリスト。
義父は高名なフランス人映画監督。
アメリカ人の経済学者である婚約者がいる。

伊勢谷友介 (リチャード新藤):
洋子の婚約者。
結婚のために、ニューヨークで暮らそうと洋子を誘う。

桜井ユキ (三谷早苗):
蒔野の才能と存在そのものに惚れ込んだマネージャー。

木南晴夏 (中村奏):
祖父江の娘で、小さい頃から蒔野を慕っていた。

風吹ジュン (小峰信子):
洋子の母。
世界的な映画監督イェルコ・ソリッチの妻。
長崎でひっそりと暮らしている。

板谷由夏 (是永慶子):
洋子の友人で、蒔野を担当するレコード会社の社員。
二人が出会うきっかけを作った。

古谷一行 (祖父江誠一):
クラシックギター界の巨匠。
蒔野の師匠であり、その才能を若い頃から高く評価していた人物。

作品概要
6年間。

想いあっていたはずなのにすれ違い、人生が変わっていった男女の物語です。

世界中どこでも繋がれる現代において、誰もが自由に行き来が出来るはずなのに、小さな出来事から大きく、それぞれにズレていく。

その命の中で、一番大切なものは何か。

大きな孤独と、哀しみと、苦悩____そこから掬い上げた小さな喜び。

軽やかなギターの音色に載せて、流れる時間は、彼らの人生そのものです。

【マチネの終わりに】あらすじ(ネタバレなし)

6年の歳月

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ニューヨークの街を、洋子は駆けていました…上質のグレーのコートに、ヒールのある靴で。

いつもなら決して走らない主義の彼女が、想いを抑えきれないかのように、その道を懸命に。

真っ直ぐに走る先にあるもの。

大切なそれを___今度こそ掴むために、息を切らして、洋子は駆けていたのです。

2013年、東京

パリの通信社に務めているジャーナリスト・小峰洋子は祖母の葬儀のために一時帰国し、東京で、友人の是永慶子によって、一人の男と引き合わされます。

彼はクラシック・ギタリストの蒔野聡史。

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天才と言われその才能を早くに見いだされてきた彼は、少し気難しいけれど女性に対してはジェントルな為人の人物でした。

慶子は、洋子のことを高名な映画監督のイェルコ・ソリッチの娘だと紹介します。

とはいえ、母親の連れ子として数年共に暮らしただけではありましたが。

ソリッチの映画「幸福の硬貨」のテーマ曲を通して、二人は急速に親しくなります。

たった一晩の邂逅でしたが。

それは二人にとってまさに運命の出会いでした。

慶子は牽制するように、洋子には婚約者がいると言いますが。

洋子に魅力を感じた蒔野はとらわれることなく語ります。

「人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでいるけど、実際は常に、未来が過去を変えているんだよ。変えられるともいえるし、変わってしまう、とも言える。」

蒔野が何気なく発したその言葉は、そこから先の二人の時間軸を支配するだけの意味を持っていたのです。

そんな彼らを不安なまなざしで見つめる存在がありました。
三谷早苗。

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蒔野を信奉し、全てを捧げるファンであり、彼の才能の為なら何でもする、と決意しているマネージャーでした。

数か月後、パリ

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仕事に戻った洋子は、しかし身近なパリの街中でテロが起こったことから、その取材に飛び回っていたのです。

社屋に戻ったところで顔なじみのスタッフとおしゃべりし、別れた直後にテロリストによる襲撃があり…間一髪、洋子はエレベーターの中に逃れたことで、命拾いをしたのです。

彼女は怯え…心配する慶子や、蒔野のメールにレスすることすらできませんでした。

ようやく、パソコンの画面越しに顔を見て話しをした蒔野と洋子でしたが、怯える彼女は窓の外に響く工事の雑音にすら震えていたのです。

そんな彼女に、蒔野は優しく笑いかけ、そして再会を約束しました。

マドリードからパリへ

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蒔野は、師匠である祖父江のコンサートのついでにパリに向かいます。

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軽やかな足取りで現れた洋子と再会し、そのままレストランでの素晴らしい食事と、軽妙な会話が続きましたが。

彼女は、ようやく落ち着きを取り戻しはしたものの、命がけの仕事をしていること、そして婚約者のリチャードの存在をはっきりと告げました。

テロのあとで、リチャードはパリまでやってきて、洋子に具体的なプロポーズをし、ニューヨークで暮らそうと誘っていたのです。

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蒔野は、それを承知の上で洋子に想いを告げました。

「もし洋子さんが、地球のどこかで死んだって聞いたら、僕も死ぬよ」

ストレートなその言葉に戸惑いながらも、拒絶できない洋子。

蒔野は、自分を受け入れてくれるのであればマドリードのコンサートに来て欲しい、と願うのですが。

その日、洋子はその場所に行けませんでした。

同僚が取材中に危険な目に合って、怪我をしたのです。

蒔野は一度は絶望して演奏を中断してしまいましたが、事情を知って再びパリを訪れました。

恐怖と怒りでパニックになった洋子の同僚女性をともに介抱し、美味しい料理を振舞い、二人のためにギターを爪弾く蒔野。

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二人きりになった時、洋子と蒔野は唇を重ね、互いの気持ちを確かめ合ったのです。

以下、結末までのネタバレになります。ご注意ください。


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【マチネの終わりに】あらすじ(ネタバレ)

すれ違う東京の夜

色々なことを片付けたら、東京に向かう、と洋子から連絡を受け、その日、蒔野は彼女を迎えるための料理を作っていました。

ところが、思いがけない連絡が入ったのです。

蒔野の師匠の祖父江が脳出血で倒れ、緊急手術になる、と。

急いで病院に向かった蒔野はタクシーの中にスマホを落としてしまいました。

マネージャーの早苗は、まさにその時、洋子が帰国して蒔野の元にやってくるのだということを察したのです。

彼女は、病院に、祖父江の娘とともに蒔野が残るように仕向け、自らがタクシー会社に向かって蒔野のスマホを回収し、洋子との長いやり取りの全貌を知ったうえで、彼女に“蒔野”として別れを告げるメールを送ってしまったのです。

早苗は、証拠を隠滅すべく、蒔野のスマホを破壊し「水に落とした」として詫び、代わりに差し出した仕事用の携帯で偽の番号を教えて、洋子に連絡がつかないように工作したのです。

早苗にとっては、蒔野が全てでした。

音楽も、存在も、それが早苗の人生全てと引き換えても良い程に、大切だったのです。

彼女にとって、洋子は異物だったのかもしれません。

それを排除することこそが、正義だと思い込み、罪悪感を抱えながらも二人を引き離すことに決めたのです。

洋子は、一人でホテルに向かいましたが。

エレベーターの中で雷鳴に呼び起されたフラッシュバックに怯え、涙し、そして蒔野と二人で訪れることを約束していた故郷の長崎へと、単独で旅立ったのです。

“義父”の思い出

洋子にとってイェルコ・ソリッチは義父=実母の二人目の夫でした。

連れ子の洋子にも優しく接してくれましたが、その暮らしは長く続かなかった、と記憶していました。

実際、その死もニュースで知ったほどだったのです。

しかし、母が語ったその実像は全く異なるものだったのです。

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ソリッチの作品は政治的に危険視されるようになり、母の信子と洋子の身辺にも危険が迫ったことから、二人を残して彼は単身で日本を離れざるを得なかった、というのです。

洋子の中で、それは“過去が変わった”瞬間でした。

一方、連絡が取れなくなったことをいぶかしむ蒔野は羽田空港で彼女を探し、待ち続けましたが、そのすれ違いは取り返しがつかないものとなって、二人の運命を大きく捻じ曲げてしまったのです。

祖父江の死

倒れてから4年後、祖父江は亡くなりました。

その葬儀に参列した蒔野と、隣には早苗。

二人の間には幼い娘がいたのです。

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慶子は蒔野を始め、祖父江の弟子たちに追悼のトリビュートアルバムを提案しました。

マドリードでの失敗以来、もう長いこと人前で引いていなかった蒔野は再起を決め、コンサートの企画も承諾したのです。

そんな話の中で、蒔野は洋子が結婚してニューヨークに住んでいるのだという話を聞きました。

彼にとってはまるで古傷のような恋でしたが。

洋子はその頃、苦境に立たされていたのです。

ニューヨークで

経済学者のリチャードは日系アメリカ人であり、現在は企業の顧問として莫大な資産を持つ成功者でした。

洋子はその妻として、一人息子を授かったのですが。

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夫婦の間は冷え切っていました。

リチャードにとっては、大切に愛してきた婚約者の洋子が一度でも自分より蒔野を選んだことが、どうしても許せなかったのです。

息子の親権を取って、離婚することを考えていた洋子でしたが、夫はどうしても彼を手放さず。

結果的に共同親権を持つこととなり、洋子には月一度程度の面会でしか会えなくなってしまったのです。

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そんな時、彼女の前に表れたのは早苗でした。

蒔野のニューヨークでの復活コンサートの準備のために、単身渡米してきた早苗は、あの雨の日に二人を引き裂くメールを送ったのは自分だ、と告白しました。

「今更?!」

混乱する洋子と。
同時に同じことを告げられて慟哭する蒔野。

ずるいことをしたままでは、蒔野が前に進めない___そんな理由で早苗は二人に真実を伝えたのです。

しかし。

既にそれぞれの人生は分かたれており、蒔野と早苗の間にはユキという娘もいます。

諦めと、後悔と、さまざまな感情を呑み込む二人でしたが。

早苗は洋子に、蒔野のコンサートを聴きに来て欲しい、と言い。

帰国後、入れ替わりにニューヨークに向かう蒔野を微笑んで送り出すのです。

幸福の硬貨

そのホールは、かつて蒔野がデビューしたときにコンサートを開いた場所でした。

洋子も偶然聴いていたそのとき。

彼女の義父、イェルコ・ソリッチ監督の作品「幸福の硬貨」のテーマを弾いた蒔野。

様々な思いが去来するなかで、円熟味を増した彼の演奏は聴衆を魅了していました。

顔を上げて、客席を見回したとき。

その奥に洋子の姿を見つけたのです。

洋子は、文字通り駆けつけました。

コートの裾を翻し、息を弾ませて。

目と目があった二人___蒔野は言うのです。

「マチネの終わりに、大切な人に特別な曲を捧げたい」

“幸福の硬貨”…それは、二人を結びつけた始まりの曲でした。

終演後、晩秋のセントラルパークに駆け出した蒔野。

またすれ違うかと思われたその時、蒔野のコンサートを聴いていた観客が彼に声を掛けました。

話している蒔野の姿を見つけてくれた洋子。

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6年の歳月を経て。
二人は、ようやく在るべき居場所を得られたのかもしれません。



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【マチネの終わりに】感想とレビュー

6年を、長いとみるか、短いとみるか。

40代の男女が過ごしたその時間は、ずしりと重たく。

そして双方が違う相手と結婚し、そのどちらにも、子供まで生まれている、というところが、いろんな意味で重しになり、枷になり、そして自分の与り知らないところで引き寄せられ、引き離され、翻弄されて…10代、20代と違って、自由に生きられない息苦しさを抱えながらも、どこかで想い続けている洋子と、蒔野。

二人は、それぞれの責任を果たしながらも、自分らしく生きることを模索し続けていました。

撮影当時のことを回想して、福山さんがおっしゃったこと。

人間ドラマとして、何年かの長いスパンを演じるので、幸せな時もあれば、そうじゃない時もあれば…というような、陰影のある日常と歳月、そしてキャラクターが描かれる作品になっていくんじゃないかと思っています___。

ドラマチックだけど。
ものすごく地に足が付いた、生活感のある物語だ、と私は思いました。

たった三回の短い時間を共有しただけで、人生を変えてしまった。

一目惚れ、とも少し違って。

石田さんはどこかでそれを“ソウルメイト”と語っていらっしゃいましたが。

理屈ではなく。
引き合う存在と言うのはあるのでしょう。

死の危険と紙一重のところで生き延びた洋子の経験や、遠い昔、蒔野のデビューコンサートを聴いていたという縁も、きっと何一つ、二人に人生にとって無駄なことは無く。

全てが糸のように縒り合されていまがあり、そしてようやく互いに辿り着いた。

ピュアな物語です。

見る人の年齢や、性別によって全く違う印象が残るかもしれません。

でも、ただ、美しいその映像を見るだけでもいい。
街の空気を感じて、全編に流れる美しいギターの音を味わうだけでいい。

観ないと勿体無いですよ、と囁きたくなる映画です。


↑年齢と、経験と、それから、なんだろう…年輪みたいな…。
数年前の映画「SCOOP!」では、腹は緩んでタルタルの不良中年だった印象がいまだに残っていたのですが。
この度、ばっちり蒔野さんモードに上書きされました。


↑冒頭の洋子さんのように。
走り出したい衝動、解ります。


↑余韻のあるラスト、あの空気がたまりません。


↑サントラ、たぶん買っちゃう予感。
心象風景がそのまま音になって包まれているような幸福感、ありますよね。


↑許す…許されたのかな、”彼女”は…⁈
というか、サナエを演じた桜井ユキさんが凄まじかったんですよ…。
今、ドラマ「G線上のあなたと私」では、ちょっとベクトル違うけど、奪われた側を演じていて、芝居の精度が半端ないです。


↑ 若かったら、こういう流れにはならなかっただろうな。
もっと無残だったり、残酷だったり、傷ばかりが増えただろう、と思ってしまう。
呑み込んだり、蓋をしたり。
そういう二人だからもう一度始められたんだと思う。


↑多分、ここから先、この人は凄く伸びると思いますよ。
まずは「G線上のあなたと私」を観てください。
きっとびっくりするから!


↑撮影は恐らく一年前くらいですね。作中のノートルダム大聖堂、美しかったです。

まとめ

肌や揺れる髪、服、街並み、空の色、流れる風、雨、雪、全ての質感が美しく、むしろ新鮮であったのは、この映画が今ではもう珍しくなってしまった35ミリフィルムで撮影されたことによる嬉しい効果です。
デジタル全盛で、そういう映像になれた目で見るととても新鮮です。

観終わってからそのことを知ったのですが。

アナログの少しまろやかな風合いは、心に優しく溶け込み、より一層この世界を重厚に、そしてクリアに伝えてくれるような気がします。

そういう意味でも最高のスタッフを揃えて撮影した作品です。

そして、演者の皆様もまた素晴らしい。

青い薄闇の中で見せた福山さんの慟哭は、人であることを止めてしまったかのような壮絶な表情でしたが、その直後にぽろりと流れた一筋の涙が彼をこの世に引き留めていたように感じました。

その彼が自分を取り戻し、音を取り戻し、そして再びステージに立つ瞬間を、見届けないのはもったいないです。

音と、時間と、感情が昇華する瞬間を見届けてください。

この映画には、コンサート一本分、もしくはそれ以上の感動があるはずです。

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https://www.toriko-movie.com/rakuen-netabare/

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