映画ネタバレと感想

映画【ひとよ】ネタバレあらすじ!壊れてしまった家族の再生の物語。感想レビューも

(C)2019「ひとよ」製作委員会

子供たちを守るため。

2004年5月のある雨の夜、母は夫をその手で殺めたのです。

___それから15年後の今、歪んでしまった人生に悩み、日々を懸命に生きている兄妹のもとに、その母が戻ってきました。

再会は、しかし苦く、つらい…新たな哀しみの始まりでした。

ここでは、映画「ひとよ」のあらすじを「ネタバレなし」、「ネタバレあり(結末まで)」のパートに分けてご紹介します。

後半では、感想レビューを書いていますので、そちらもぜひご覧ください。

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【ひとよ】予備知識

「映画名」の予告動画

公開日(日本):2019年11月8日

監督:白石和彌

キャスト
佐藤健 (稲村雄二):
稲村家の次男。
東京で売れないフリーライターをしている。
子供の頃は小説家になりたかった。
15年前の事件を許せず、戻ってきた母に背を向ける。

鈴木亮平 (稲村大樹):
稲村家の長男。
吃音があり、子供の頃から引き気味のおとなしい性質だった。
電気屋に務めるサラリーマンで妻子持ちだが、妻とは母のことが原因で諍いがあり、別居中。

松岡茉優 (稲村園子):
稲村家の末娘。
事件がもとでいじめられ、美容師の夢を諦め、今はスナックで働いている。
母が、自分たちを助けるために父親を殺めたのだと信じている。

音尾琢真 (丸井進):
こはるの甥で、稲丸タクシーを引き継ぎ、社長を務めている。
本当は漁師になりたかった、らしい。

筒井真理子 (柴田弓):
稲丸タクシーの事務員で、事件当時の事情を知っている。
夫と死別、娘と二人で痴呆の母親を抱えて懸命に働いている。

浅利陽介 (歌川要一):
稲丸タクシーの運転手。雄二の同級生。

韓英恵 (牛久真貴):
稲丸タクシーの運転手。雄二の同級生。

MEGUMI (稲村二三子):
大樹の別居中の妻。
幼稚園に通う娘、ミヨがいる。
事件のことを隠していた夫に不信感を持っている。

大悟(千鳥) (友國淳也):
堂下のタクシーに乗り合わせたチンピラ。

桑原裕子 (スナックのママ):
園子が働くスナックのママ、実は本作の原作者。

斉藤洋介 (コンビニの店主):
中学生だった雄二が万引きしたコンビニの店主。

佐々木蔵之介 (堂下道生):
稲丸タクシーの新人運転手。
生き別れた17歳の息子がいる。

田中裕子 (稲村こはる):
稲村兄妹の母親。
刑を終えて、15年ぶりに町に戻ってきた。

作品概要
バイオレンス映画の名手、白石和彌監督が手掛けた家族の物語です。

どうして、母がそんな凶行に手を染めたのか。

そして今。
目の前に現れた母に対して、苦労続きの15年と歪んでしまった自分たちの人生を振り返り、やるせない気持ちを噛みしめる子供たち。

哀しみの向こう側に未来があるのか。

茨城の海辺の町を舞台に、寄り添うように生きてきた家族の葛藤と、再生のための苦しみの日々を描いています。

【ひとよ】あらすじ(ネタバレなし)

雨の夜の別れ

2004年の5月。

酷い雨が降る夜に、大洗の小さなタクシー会社・稲村タクシーの敷地で、事件が起こりました。

社長の妻であるこはるが、酒に酔って暴言を吐く夫を、タクシーで跳ねて殺害したのです。

彼女には明確な殺意がありました。

夫は、普段から子供たちにまでも暴力をふるい、家族はボロボロだったのです。

子供を守るために。

むしろ、やり遂げたこはるには、それを誇らしいとすら思う気持ちまであったのです。

これで、思春期の子供たちは、満身創痍で怯える日々からやっと解放される!
脅かされることなく、好きなように生きられるはず…!

「15年経ったら戻ってくる」と言って去った母。

こはるは刑務所に収監され、その日から始まった“殺人者の子供”としての人生は、違った意味で過酷で辛いものだったのです。

“屋号”を変えて

15年前の事件の後。

タクシー会社は目に見えない敵からの攻撃に疲弊する日々でした。

ペンキで“人殺し”といたずら書きされたり、タイヤをパンクさせられたり。

従業員も抱えている中で奮闘したのは、こはるの甥・丸井進でした。

彼が社長を引き継ぎ、小さな町の中で踏ん張った結果、屋号を“稲丸タクシー”に変えて、15年経った今も営業し続けてこられたのです。

事件当時の事情をよく知る事務員の弓や、今では雄二の同級生の要一や真貴も運転手として働いており、事務所はまるで疑似家族のような雰囲気になっていました。

そんな中で、15年目のその朝、一人の男が新たに新人運転手として出勤してきました。

穏やかなしゃべり口調の彼は堂下と名乗り、その日初めての乗務に出ていったのです。

命日

長男の大樹は子供の頃から吃音を抱えながら背中を丸めるようにして生きてきました。

機械いじりが好きで、縁あって石岡の電気屋に勤めていましたが、そこの娘であった妻の二三子とは、母親のことを黙っていたせいで巧くいかなくなり、彼女は娘を連れて実家に戻ってしまったのです。

末っ子の園子は、幼い頃からの夢だった美容師の学校に進んだものの、こはるの事件のことでいじめられて中退し、実家近くのスナックで働いていました。

二人は連れ立って父の墓にお参りをします。

「死んじゃってるけどさ…もっと死ね!」

一応の体裁を整える仏花と線香を供えて、園子は柄杓で水を墓石に叩きつけるようにかけたのです。

今日は15回目の父の命日。
母が帰ってくる、と告げていた約束の日でした。

東京で

稲村家の次男、雄二は子供の頃から本が好きで、小説家になることを夢見ていました。

しかし、現実は厳しく。

しがない風俗の記事などで糊口を凌ぐ日々です。

東京で一人、なんとか暮らしている彼の手元には古びたボイスレコーダーがありました。

それは、事件が起こる前にこはるに「お父さんには内緒」と渡された誕生日のプレゼントでした。

彼はその日からずっとそのボイスレコーダーを手にしていろいろなことを語り、記録を残していたのですが、それは図らずも、あの雨の夜の事件で母が語った全貌を残すことにもつながったのです。

こはるの帰宅

その夜、稲丸タクシーの運転手、真貴は客を乗せて近道をしようと走っていた山の中で、登山道から不意に現れた人影をギリギリ避けた!と報告しました。

事故にならずに良かった、と胸をなでおろす進でしたが、実はそれこそがこはるの姿だったのです。

帰ってきて欲しい、と願ってはいたものの、その帰宅にとまどう大樹と園子。

こはるは、刑期を終えてからも様々な土地を転々と働き、ほとぼりが冷めてくれることを祈って15年という年月を生きてきたのです。

(C)2019「ひとよ」製作委員会

困惑が先行する子供たちよりも、進や弓、そして要一や真貴たちは「おかえり!」とこはるを迎え入れたのでした。

知らせを受けて大洗に戻ってきた雄二は、胸の中にある企みを抱えていました。

そのころ、両親の事情を黙ったまま結婚した大樹は、妻の二三子に離婚を求められることになってしまうのです。

父と息子

仕事に慣れ始めた堂下は、進に頼んで10万円を前借します。

随分前に別れたままの息子・カズキに「会いたい」と連絡を受けたのです。

「おとうさん」と呼ばれて、堂下は幸せなひとときを過ごしました。

ホルモンを焼いてお腹いっぱい食べさせ、一緒にバッティングセンターで遊ぶ。
男の子の父親としては、これ以上はない喜びの時間でした。

別れ際、そんなカズキに前借分の残りのお金の全て手渡して見送ると、一抹の寂しさが残りましたが、しかし、それは父親としての幸せをかみしめた最後の瞬間だったのかもしれません。

以下、結末までのネタバレになります。ご注意ください。


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【ひとよ】あらすじ(ネタバレ)

不器用な人々

こはるが戻ったことで、稲丸タクシーの周辺では変化がありました。

大樹と二三子の諍いが激化し、口下手な大樹は思いをうまく伝えられないことに苦悩します。

とうとう、離婚届までが持ち出される事態になり、そうした二三子の言動と、そして過去の父の影のフラッシュバックに苦しむ大樹。

そして、一見、飄々としているような風情のこはるでしたが。

(C)2019「ひとよ」製作委員会

彼女の中にも、子供たちとの間にある想いの齟齬に苦しみがありました。

彼らを地獄のような日々から解放できると信じていたあの行いが、違った形で彼らに降りかかり、苦しめていることに悩んでいたのです。

長い間、事務員として勤めていた弓は、事件の時のことを思い浮かべて、こはるを慰めてくれましたが。

彼女自身も痴呆の母親の徘徊に苦しんでおり、「楽になりたい」という気持ちに苦しんでいました。

そんな弓は、親子ほども年が違う要一と束の間の逢瀬を重ねていましたが。

夜遅く、そのさなかに鳴った娘からのLINEのメッセージを黙殺したことで、大きな後悔を抱えることになります。

「おばあちゃんがいなくなった!」
それは、彼女の家ではよくある“いつものこと”。

(私だって、自由な時間が欲しい!)

誰も、そんな弓を責めることはできないはずでしたが。

その後、娘と二人で街中を夜通し探し回ったのに。

母は、水辺で溺れて亡くなっていたところを発見されたのです。

「おばあちゃん、殺しちゃった…」
呆然とした弓の告白に、こはるたちはなすすべもありませんでした。

降りかかる災厄

こはるの記事が再び週刊誌に掲載され、眠っていたはずの人々の記憶が掘り起こされていきました。

稲丸タクシーは誹謗中傷の嵐のさなかに放り込まれたのです。

(C)2019「ひとよ」製作委員会

昔と同じように、記事のコピーがべたべたと貼られ、大切な商売道具のタクシーのタイヤを全てパンクさせられるなど…こはるは、その様子に、自分がしでかしたことと、子供たちが浴びせられてきた世間からの批判を今更ながらに思い知るのです。

「子供たちの人生がめちゃくちゃになってる時に、何しに帰ってきたんですか?」

雄二がぶつけた言葉を噛みしめながらも___。

「自分がしたことを疑ったら、子供たちが迷子になっちゃう」

(C)2019「ひとよ」製作委員会

こはるは、しかしそれでもあの日の行いを悔いてはいなかったのです。

そんなある夜の事。

園子は、雄二のパソコンに週刊誌の記事の原稿と、事件の資料、そして今まさに彼が撮り溜めていた写真を見つけていました。

雄二はこはるのことをネタにして、フリーライターとしてのキャリアを積み、小説家になる足掛かりを狙っていました。

この15年の間に舐めてきた辛酸を昇華することもできず、素直に母親を迎え入れることもできず、彼自身も苦悩していたのです。

彼の過去

堂下がそんな稲丸タクシーでの仕事にも慣れてきた頃、大洗の港で一人の男を乗せました。

かつて、彼の配下だった友國です。

堂下はヤクザでした。

一人で足を洗い、生きなおすために大洗にやってきたのです。

友國は、北海道の利権の話をしました。

苫小牧から大洗に、フェリーで人が来る。

その人物をここから載せて東京まで送る仕事を頼みたい、と。

勿論、高額な料金はそのまま会社と堂下の利益になるはずでしたが、友國が真っ当な仕事の話を持ってくるわけはありません。

「あんたは後部座席に乗る人だ!」

それは暗に、こんな安い賃金で使われているよりも、過去の仕事に戻れ、と言っているようなものでしたが、堂下は断ったのです。

もう、その世界に戻ることはできない、と。

それは自分の為、何よりも息子の為。

そう思っていたのですが。

友國は、一度だけその仕事を受けるように、と言ってきました。

「ハヅキと言う名前で予約を入れるので、その客を乗せてくれ」

一度だけ。
それで済まないだろうという予感はしていましたが、堂下はしぶしぶその話を呑んだのです。

その日。
フードを目深にかぶった若い男がフェリー港の桟橋近くで待っていました。

「ハヅキさん?」

頷いて乗り込んできたのは、見間違うはずもない息子・カズキだったのです。

大事そうに抱えたバッグを東京に運べば20万円貰えるのだという、その仕事は、違法薬物の売人そのものでした。

カズキは友國によってシャブ中毒に墜とされ、そして手下にされていたのです。

「全てお前のせいだ」と罵倒され、シートを蹴飛ばされた堂下は悲嘆にくれました。

彼の過去の行いが家族を壊し、まだ高校生だったはずの息子をこんな目に合わせてしまったのだと思い知ったのです。

命がけの、チェイス

その夜遅く、堂下の車が会社に戻ってきました。

彼の手には酒瓶があり、べろべろに泥酔している様子です。

普段、きっちり締められていたネクタイは緩んで胸元があいており、そこには見事な刺青がのぞいていました。

腕まくりした袖の下も同様です。

彼は生きなおすことを決めた時に酒も煙草も、バクチも一切手を出さないと決めたのですが。

あまりの哀しみと衝撃で、その禁を破ったのです。

その直後、こはるを助手席に乗せて暴走する堂下の車を真貴が発見し、営業所に連絡してきました。

たまらず、雄二はタクシーの鍵を取り、車を出そうとしますが、大樹と園子も同行しました。

あの日、雨の中で進が運転する軽トラで出頭しようとしていたこはるを、無免許の雄二が運転するタクシーで彼らは追いかけたのです。

父親が車の運転を厳しく仕込んでいたことで、迷わず大樹も園子も乗り込みました。

その時の記憶がフラッシュバックする中で、彼らのタクシーは大洗港のフェリーターミナルに向かう堂下の車を見つけましたが、制止に耳を貸すこともなく、堂下はアクセルを踏み続けました。

彼は、こはるを道連れにして海に飛び込むつもりだったのです。

その意図に気付いた雄二は、先回りして車をぶつけることでやっと彼を止めることに成功しました。

大切な「ひとよ」

やっとのことでとりもどした母・こはる。

(C)2019「ひとよ」製作委員会

そして反吐を吐き地面をのたうち回る堂下の姿に、雄二は叫びました。

「どこからやり直せばいいのか…教えろよ!」

(C)2019「ひとよ」製作委員会

15年___人生の半分以上を間違えたまま生きてきてしまったかのような彼らは、途方に暮れ、子供のように泣き、しかし、それでも朝が来れば、生きていかなければなりません。

そしてまた巡ってくる日常の穏やかな時間。

雄二は、迷いながらもパソコンに残していた資料と原稿、そしてボイスレコーダーの音声をすべて消しました。

園子は、しまい込んでいた宝物のシザーケースを探り当て、こはるの髪を切るのだと庭に出ていきます。

ケープをかけて、それを待っている母の姿を見ている大樹と雄二。

こはるの言葉が、彼らの胸の内に去来します。

「___ある人には何でもない夜が、ある人には特別な夜にもなる」

15年前の哀しい雨の夜も。
大洗の港までこはるを追ったあの夜も。
そして、堂下が息子と過ごした夜も…。

大樹の夫婦の問題も、雄二や園子のこれからも、まだ何一つ本当に解決していなかったとしても。

少なくとも家族が互いの絆を認め、もう一度確かめ合うことができた今。

(C)2019「ひとよ」製作委員会

少しずつ何かが変わっていくはず…そんな風を感じるなかに寄り添う“家族”たちの姿がありました。



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【ひとよ】感想とレビュー

凄いもの観ちゃった、と、エンドロールが終わった時にふーっと胸の奥から息を吹き返したような気持ちになりました。

前の方のシートで見ていたのですが。

背後からはすすり泣きの声も聞こえてくる終盤、ああ、やっぱり白石さんの作品だなぁ、という独特の、意外性満載の小さなどんでん返しが畳みかけてくるような展開。

暴き尽くされてしまった感のある稲村家の家族だけでなく。

___誰にだって秘密はあり、後ろめたさや哀しみや苛立ちがそこにはあって、地方都市の閉塞感もあいまった何とも言えない息苦しさのなかで「それでも一生懸命に生きているんだよっっ!」というメッセージが、まるでスクリーンから噴き出して、突き付けられるような”圧”を感じました。

殺人に正義を求めてはいけないんだろうけど。

じゃあ、妻子を毎日ボコボコにしていた男を裁けなかった法や、彼を止め得なかった他の大人たちの罪は一体どうなるんだろう。

夫を車で跳ねて死なせたこはるの表情は、達成感と安堵だったのか、清々しく見えるような艶があり、他に選択肢がなかったのだと言いたげな意思をもった目をしていました。

しかし、きっと、その暴力から逃れることだけを考えていて、麻痺していたんだろうな、と。

ギリギリの瀬戸際で、それでもこはるが子供たちを何よりも大切に思っていたことがわかる瞬間がありました。

雨の中、夫を殺して戻ってきた彼女が子供たちに差し出したのは不格好なおにぎりの載った皿です。

そこにあった卵焼きは6切れ。

無意識に「こはるは自分がそれを食べる事は考えていないんだろう…」と直感するのです。

切ない程に子供の事だけを思っていた心情が焼き付けられたカットに、胸が苦しくなる思いでした。

実の母が、父を殺した…そこに残された子供たちの暮らしが、無遠慮な好奇心や悪意に晒され、乱され、差別され、悲惨なことになるかもしれない、という可能性に、彼女は気づけなかったのです。

気付いていたら、他の手段も考えられたかもしれない。

でも、こはるというひとは、残念ながら、そうではなかった…。

悪い人ではなく、むしろ子供を守りたくて、自分を犠牲にして夫に立ち向かったのに、掛け違えたものはあまりにも大きかったのです。。

委縮して黙り込む大樹。
後ろめたさを抱えながら、母のことをネタにして這い上がろうとする雄二。
こはるを信じ、そこに家族の温もりを求めた園子。

人生の半分、もしくはそれ以上に及ぶ失われてしまった時間を取り戻そうともがく彼らと、淡々と、あるいはシレっと周囲と馴染んでいくこはるの、少しずつ擦り合わさっていく思いを描いている秀作です。


↑ この家族たちの、そして稲丸タクシーのみんなの、10年後を見てみたい。


↑ どっちも凄いの。
良いとか悪いとかじゃなく、どっちも素晴らしいの。
今年の秋の邦画は豊作だなぁ、と思う瞬間ですね。


↑ 「静の暴力」って、あぁぁぁぁぁぁ…そういう言葉で表せるのかぁ、と思って、驚きもし、納得もする。


↑ うん、若いころの豊悦に似てる!
そして唐突に始まったそのシーンは、しかしさらりと流れていて、彼らの日常のなかの一コマでしかなく、そういうふうに演じられるようになったんだなぁとしみじみしてしまった。


↑ そう、白石監督の暴力の描写のすさまじさは定評ありますが。
思春期の息子たち、そして娘までをボコボコにする父親の醜悪さがこれでもか、と描かれ、さらに、大人になった大樹が自分の中にあったその遺伝子の片りんのようなものに気付いて絶望する瞬間とか、闇が深すぎて哀しくなる…。


↑ 身もふたもないけど、でも最後のまとまりは流石の安定感。


↑「一夜」ではなく「ひとよ」…日本語の美しい響きに救われることって、あるんだなぁ、と。


↑ 音尾琢真さん大好きなんですが!
この数年の進化が凄すぎて、昔の彼を思い出せない。
今回の進さんは人が良さそうな笑顔の向こう側で、踏ん張って踏ん張って子供たちを支えて会社を守って生きてくきた男気のあるおっちゃん。
本作の中では一番好きなキャラクターです。

まとめ

この作品には、もう一組の親子が登場します。

こはるが戻ってきた日に稲丸タクシーに入社した中年の新人ドライバー、佐々木蔵之介さん演じる堂下。

慎ましい風情で人当たりの良さそうな堂下は、離婚した妻の元に残してきた高校生の一人息子のカズキに会いたいとせがまれ、孤独な暮らしの中で久々に、夢のような時間を過ごします。

その息子がまさか自分のせいで道を踏み外していたとは、思いもよらず。

そして、その結果を見てしまった時に、二度と飲むまいと決めていた酒を浴びるほど飲んで、こはるを巻き込んで死のうとした…親の因果というにはあまりにも悲しいその子供の現実に、白石監督はあまりにもすさまじい悲哀と慟哭を叩きつけてきました。

まくり上げられたワイシャツの袖からのぞく刺青。
それだけで、彼が過去にしでかしてきたこと、そして家族が味わっただろう苦悩がしのばれます。

”ふつう”からはみ出してしまった大人たちと、それに振り回されて懊悩した子供たち。

そこに”救い”はあるのか。

観る側に投げかけられるものはずしりと重たく、しかしキャストさんたちの個性や、芝居の見事さによって小さな笑いと軽妙さがあり、その緩急の取り混ぜかたが素晴らしかったです。

田中裕子さんの、ぼんやりしているかのようでいて、ときどき予想もつかないふり幅でとんでもないことをしでかす母のこはる。

稲村家の兄妹に寄り添うようにして働いてくれた親戚のおじさん・進を演じた音尾琢真さんの懐の深さや、筒井真理子さん演じる事務員の弓の裏側にあった孤独と、後悔。

どのキャラクターも、一人として無駄のない凄い作り込みの密度です。

フェリーと、アニメ「ガルパン」の街・大洗を舞台にした物語は、最後の最期でその解釈を見る側に投げかけ、実際にこんなケースが身の回りにあったら、自分は一体何をどう思うのだろう、という余韻を持たせて終わるのでした。

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